テクノロジーと人間の役割を明確に分け、生産性向上を図る
はじめに、慶應義塾大学大学院ビジネス・スクール特任教授の岩本隆氏が登壇し、HRテクノロジーの最新動向と実例を紹介した。岩本氏は、グローバルな社会・産業の変化を読み解くキーワードとして、あらゆるものがデータ化され様々なつながりにより新たな付加価値が創出される「第四次産業革命」を挙げた。これは2015年頃から始まったとされており、金融や農業など多種多様な領域で最新テクノロジーを活用する「xTech(クロステック)」が新たなビジネスチャンスとして広がりをみせている。HR領域も例外ではない。スポーツなど他の領域ですでに活用されている最新テクノロジーを応用した低価格なサービスが生み出され、幅広く使われ始めているという。
このような変化を受けて、経済産業省は第四次産業革命を乗り切るための産業人材政策を主導している。知的労働の単純作業はテクノロジーに代替させ、すべての人がテクノロジーを活用して新たな付加価値を生み出せる社会を目指すものだ。
「今後は、文系・理系問わずテクノロジーの活用が必須となり、AIを使えば何ができるかを発想することが求められる。企業にとってはテクノロジーを活用できる人材がどれだけいるかが売上・利益に影響するが、そのような人材は圧倒的に少ないのが現状だ」(岩本氏)
次に、HRテクノロジーの変遷について言及。岩本氏によると、HRテクノロジービジネスは1980年代にシンプルな記録システムから始まり、時代を追うに従って、タレントマネジメント、エンゲージメント向上、生産性向上と、人事領域の課題を幅広くカバーするものへ進化を遂げた。国内外を問わずHRテクノロジーのツールを提供するベンダーは急増しており、扱う内容は細分化されている。採用領域だけを見ても、採用ブランド構築、求人情報、ソーシングと採用、アセスメントと雇用、オンボーディングに分かれており、様々なベンチャー企業が生まれて活発な開発が行われている。
細分化の背景には、海外を中心に従来の採用活動が「タレント・アクイジション」と再定義され、経営に与える影響の大きさが見直されていることがある。その理由は産業構造の変化だ。
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