日本とは異なる新興国の労働法規、時代の要請で頻繁に変わる法律、そして商習慣の違いが起こす労務問題は相変わらず現地経営陣の頭痛の種といえるでしょう。同時に、日本とは異なる、労働者や学生の就労観を的確に把握し、モチベーション向上を意識した人事施策も要求されています。
そこで、特に現場企業活動の規模、またその戦略上の重要性から対応の緊急度の高い中国にクローズアップ。現場で何が起きていて、企業側がどのような対応を迫られているのか、実態を紹介します。
人事管理を困難にする、『ギャップ』を正確に把握せよ
中国での実態を把握するには、まず日中および、中国地域間での企業が抱える『ギャップ』を正確に認識することが始まりと考えていいでしょう。ギャップとは、以下の5つを意味します。・自社労働契約など規定類と現地法律、政令の要請とのギャップ
・自社規定類に記載されていることと実際日々行われている運用とのギャップ
・本社を含めたマネジメントの戦略・HR方針と現場とのギャップ
・自社報酬体系・報酬水準と市場とのギャップ
・現場採用人材とのコミュニケーションギャップ
中国では、急激な社会変化に伴う法律の変更が頻繁です。かつ地方によって法定休暇日数が異なる、社会保険計算基数が異なるといった、ルールが固有かつ運用が統一されていないことで、人事管理を難しくしています。中国での労働争議が時々日本で報道されていますが、それは大規模に発展したものだけです。実際には現場で日々不要な金銭解決を迫られたり、不適切な人員を抱え込まざるを得なくなったりするケースが多々起きています。また、問題対応へのわきの甘さから会社の文化が形成されてしまうこともしばしばです。
日系企業においてはこのギャップが高い確率で存在し、かつマネジメントの認識と現場のズレが大きいというのが現地からの警告です。ある意味これらのギャップを本来のあるべき姿(経営方針・人事施策)に戻すリーダーシップが企業側(本社およびマネジメント)に不足していることが問題をこじらせていると言っても過言ではありません。
一方社員の働くモチベーションに関する施策においても、何が期待されているのか、どのような報酬体系が設定されているのか、上位役職への可能性・昇進スピードなどにおいて市場とのギャップが優秀人材の離職・採用困難を招いています。
本コラムでは、本稿を含み全5回で、中国の現地人事施策について取りあげていきます。次回からは、現地子会社で何が起きているのか、その実態を紹介します。
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