内的な混乱があっては自主性など望めない
働き方改革では、「社員の自主性を重んじることで、より生産性を向上させる」としている。自主的に動く社員を育成することは、それほど優しいことではない。今回は研修など外部からの働きかけでなく、内面に向かうことで自主性を呼び覚ますことを考えてみよう。つまり、自分の感情と素直に向き合うことから生まれる気づきから自主性を導くことに期待する方法である。ここに興味深い調査結果がある。これまで根性の影に置き去りにされてきた「感情」に着目した調査だ。1月31日に公表されたリクルートキャリアによる「転職決定者に聞く、入社後にとまどったことは?」がそれである。
これによると、異業種/同業者へ転職した人は、「前職との仕事の進め方ややり方の違い」を筆頭に、「社内・業界用語等、専門知識が分からない」、「職場ならではの慣習や規範になじめない」といった「とまどい」を感じていることが分かる。
この「とまどい」を放置するとどうなるのだろうか。転職者が入社後に抱えるもやもやとした気持ち、不満、迷いは、「内的な混乱」を招く。これでは自主性を引き出すどころか、やがて「やる気が出ない」、「再び転職したい」といった思いが生じ、重症化すると、メンタルに障害を引き起こすなどの危険性もあるだろう。
「感情と向き合う」、「言語化」がこれからのキーワード
具体的な方策を立てるにあたり、「とまどいという感情の底にある正体」に気づくプロセスが大切だ。ここで、なぜ感情を大切にするのか、「感情」と「個」の関係性を見てみよう。こうした「個」の形成が起こるのは、カウンセリングに限らず、音楽を聴いている時や、散策をしている時かもしれない。職場でも、また日常の些細なことに触れても、さらには人生の転機においても、時には大きく、時には小さくこのような循環が起こり、「個」は形成されていく。このような効果と働きは、見逃してしまっては非常にもったいないものなのだ。
なぜなら、あるときは大きな仕事のインスピレーションを与えてくれるかもしれないし、ある時は小さな心配事を解決してくれるかもしれない。
今は、ただ「根性が足りない」、「やる気の問題だ」と一蹴できない時代である。社員に自主性を持たせ、生産性を向上させたいのなら、しかるべき手続きが必要なのである。
振り返ってみれば、昭和の働き方は、根性や熱血といった鎧を纏って戦っていた時代と言えそうだ。感情はずっと息をこらして隠れていた。しかしながら、時代の変遷とともにそこへ亀裂が生じた。その亀裂を放置すれば、今後はもっと恐ろしい時代がくるかもしれない。
だからこそ、「感情と向き合う」、「(内的感情の)言語化」というプロセスで人を育てていくことが、これからの時代の人事のキーワードだ、と考えている。
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