今回は、最終ステージとしてのInternalizationについて考えます。
イノベーターの鍵は40代での大仕事
50代以降は、SECIモデルの最後の「I」、つまり「Internalization」だ。Combinationのステージでは、異分野を採り込んだ大きな構想を打ち立て、自分らしい課題を設定し、実行に移すことが重要だった。40代で壮大なCombinationを実現していれば、「自分のやってきた仕事は、どのように世界を変えてきましたか?」という問いにも解が出せるだろう。ここで大事なのは、単なる改善ではなく、社会の真のニーズをとらえたイノベーションが起こせたかだ。誰もが仕事をやっていると、当然のごとく「自分が任された領域を超えて、こうすることができたらもっと良くなるのに」という問題意識を持つであろう。しかし、「自分の仕事はここまでだから」と諦めて、こぢんまりとしたCombinationで終わってしまう人も多い。経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは、「イノベーションは知性の偉業ではなく、意志の偉業である」という言葉を残しているが、居心地の良い範囲内(Comfort zone)で人生を終始させてしまうのではなく、あえて火中の栗を拾い、修羅場をくぐり抜け、未知の世界に飛び込み、知の壮絶なCombinationを進めることができたかどうかが重要なのである。つまり、所与の責任範囲を超えて「こうあるべきだ」という姿を追い求めていたかどうかだ。
そういった強い思いで40代を過ごすことができていれば、企業内の役割のみに閉じた人生と比較して、得られた学びや気づきは、とてつもなく大きいはずだ。そういう土台があってはじめて、Internalizationを通じて、イノベーターとしての自分が開花する。