前回のコラムでは、パフォーマンスの高い人たちの結論の導き方(手順)を体系化した方法がケプナー・トリゴー法(以下、KT法)とよばれる方法だということをお話しました。
今回は、このKT法における思考プロセスを視覚化するメリットと実例をお伝えします。
思考プロセスの視覚化と共有化

いつでも、誰でも「質の高い結論」を出すには

KT法では、頭を使って結論を出す際の思考プロセスを視覚化して皆で共有化することで、職場の中での結論の質が人によって大きく異なることがないようにしていく、という思考法です。 

これは、ものづくりの現場において使用されている手法と一緒です。
商品を作る現場では、必ず、アウトプットとしての商品を「いつも同じ」で「質の高い」ものにしないといけません。そのためには、プロセスとしての手順をどうする必要があるでしょうか?

各企業がしているのは、手順の「平準化」です。毎回、誰がやっても同じように作れるように、手順をマニュアル化して決めています。これは、ものづくりの現場では当たり前のことです。

それでは、頭を使う仕事の場面で考えてみましょう。頭を使って出すアウトプットは、「結論」です。それでは、「いつも同じ」で「質の高い」結論を出すには、どうしたら良いか?

それは、ものづくりと同じように、結論を導き出すプロセスを「平準化」することなのです。そうすることで、同じ組織の中のAさんが出す結論とBさんが出す結論の質が大きく異なる、という事が少なくなります。

KT法はグローバルコミュニケーションの最強の武器

思考におけるプロセスは、ものを作る工程と違い、手順が見えないので、人に教えるのも習得するのも難しく、また共有するにも至難の業です。しかし、この思考プロセスをものづくりのマニュアルと同じように、「見える化」して共有すれば、皆が同じ手順で結論を出すやり方を習得することができます。

この思考プロセスを視覚化して共有するツールがKT法そのものであり、言語の違いがあっても、グローバルにコミュニケーションの方法として使用することで同じ結論に辿りつける最強の武器です。

KT法を使って、問題解決をした有名な事例として挙げられるのが、「アポロ13号」のストーリーです。映画にもなった有名なお話ですが、アポロ13号が月に向かう途中に、事故が発生して、宇宙飛行士たちが地球に戻ることもできないような危機に見舞われてしまいます。「もうダメだ」と絶望の淵に立たされた時、ヒューストンのNASAの技術者がKT法の問題分析のプロセスを用いて宇宙飛行士とコミュニケーションを取り始めます。その結果、短い時間で、効率的に問題の原因を究明することができ、アポロ13号は無事に地球に帰還することができた、というエピソードです。

このNASAの実例では、ヒューストンの技術者たちはアポロ13号から20万マイル以上も離れた場所にいて、情報は非常に少なくコミュニケーションの手段も限られていました。しかし、宇宙飛行士と技術者がKT法の共通の問題解決のプロセスを知っていたため、その手順にのっとり、質問、回答をして結果を視覚化しながらチームとして問題分析を行うことができたのです。どのように問題分析を行っていったかは、映画の「アポロ13号」を観て頂くと「なるほど」と感じてもらえるのではないでしょうか。

次回(最終回)は、企業でのKT法の活用例をお話しいたします。
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