各企業様に「人材育成で一番難しい階層はどこか?」という質問をすると、「中堅」という答えが返ってくることが多いようです。
「中堅」とは、マネジャーではないがそれなりに経験がある人たちです。

マネジャーに対しては、「リーダーシップ」「マネジメント」「コーチング」など、育成のプログラムがすぐに思いつきます。
また、若手は若手で「新人育成プログラム」「3年目教育」など、色々と内容は充実しています。
確かに、中堅に対する教育は手付かずのケースがほとんど・・・。
しかし、強いチームになるかどうかは、この中堅の活躍で決まるといっても過言ではありません。
中堅クラスが熱心に仕事をし、成果を挙げていると、その下の若手が勢いづくのです。
逆に、中堅に勢いがなく、モチベーションが下がっているチームはその下も活気がありません。

良い意味でも、悪い意味でも中堅クラスの社員がチームの雰囲気をつくっているのです。
例えば、上層部から施策がおりてきたとしましょう。
内容は「今月中に、各営業担当者は、お得意企業10社に対して、必ず新商品のPRをせよ」。
我々上司がメンバーにそれを伝えると、「えー、この忙しい時期にマジかよ・・・」という雰囲気が漂う。

そんな中、中堅クラスの社員1人が、「よし、やってやろうじゃないか」と率先して行動を起こしたらどうでしょう。
3日間であっという間に、10社に新商品をPR。そのうちの2社から受注をゲット。
他のメンバーはそれを見て、「お、この施策って結構いいな。やるぞ!」とアクティブな行動が続く。施策は成功して、上層部からチームは一目置かれる。

強いチームになるためには、上司以外は全て単なるチームメンバーではダメなんです。
上司の指示に対して率先して動き、成果を出す。
また、時には若手メンバーの指導も担ってくれる。
そうです、上司の右腕であるNo.2です。

私はよくマネジャー研修で「自分のチームにNo.2と呼べる人はいますか?」という質問をしています。自信を持って手を挙げるマネジャーもいますが、多くのマネジャーは手を挙げようかどうしようか迷っている。
これは、「No.2らしき人はいるが、明確にNo.2とは呼べない」という状況なのではないでしょうか。

「そうだよな、優秀なNo.2がいてくれたらいいよな。
○○営業所には、優秀な△△さんがいるからいいよな・・・」等と言った声も聞こえてきます。
たまたま、優秀な人材がいてNo.2の機能を果たしているチームがあったら、それはラッキーです。しかし、それは稀です。

最初から、No.2がいることは多くない。No.2が配属されるのを待つのではなく、今の人材からNo.2を育てるのです。
当の本人には「あなたは、チームのNo.2になってもらう」と宣言し、責任意識を持ってもらうのが第一歩です。

No.2が率先して動き、チームに良い刺激を与えてくれれば、当然他のメンバーの動きも良くなります。

「あのチームにはNo.2がいていいよな。うちのチームにもあのような人材がいればな・・・」と嘆く上司がいます。
まるでNo.2がチームにいるかどうかは「配属の運」のように考えているようです。

確かに、前の配属チームでNo.2的な動きをしており、それが当たり前になっているメンバーが、新たに配属されたチームで最初からNo.2としての動きをすることもあります。
ただ、それはレアケースだと思ってください。

No.2は育ててつくるものです。

では、どのように育てるのか?
よく、No.2になってもらいたいメンバーだけに厳しく当たり、「No.2としての自覚」を持たせようとする人がいます。
しかし、そのような回りくどいやり方はお勧めできません。
「なぜ、私だけに厳しく当たるのだ。不公平だ」と感じられるのがオチです。

No.2になってもらいたいメンバーに対して、「あなたは、このチームのNo.2として、一緒にチームづくりを行なってほしい」とハッキリ伝えるのが一番です。

その上で、自分が上司としてどのようなチームをつくりたいのか、そのために何をしようと考えているのかを「熱く」語ります。
このときの語りが「熱く」ないとダメなんです。
「そうか、上司はそんなチームを目指しているのか。面白そうだ」と感じることで、「No.2としての自覚」に火がつきます。

その上で、「あなたはどんなチームにしたいのか?」を聴きます。
ここは、しっかり聴いてください。相手が話している間は決して口を挟んではいけません。
ある程度経験があるメンバーは「こんなことをやったらいいのに」ということ少なからず持っています。しかし、なかなか言う機会がないのが実情なのです。

No.2候補の話が終わったら、先ほど自分が話した「つくりたいチームの姿」にNo.2候補が話した内容をどのように組み入れるかを、「ああでもな、こうでもない」と一緒に話し合うのです。

このような「チーム作り」の話し合いを行うことで、「チーム運営に参加している」という感覚を持ってもらい、No.2としてのプライドを醸成します。

その話し合いの流れで、「No.2として、どのような役割を果たすか」も一緒に考えてください。
これは、「あなたは、No.2としてどのような役割を果たすのか?」ということを投げかけ、自分の口で話してもらうのが重要です。

上司である我々が、「あれをやってもらいたい、これをやってもらいたい」と押し付けると、面従腹背の「やらされNo.2」が出来上がってしまいます。

以上のような、スタートアップのステップを踏むことが最低限です。
その後も、日々の業務を通じてNo.2としての教育を施していきます。
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!