大学ルートの強化が上位に
次に、「ターゲット層採用のために実施・検討している施策」について見てみましょう。全体では、「インターンシップの活用」が41%でトップ、次いで「キャリアセンター・就職部訪問」(36%)、「大学主催の学内セミナー」(31%)、さらに5位には「研究室訪問」(22%)と、ターゲットとなる「大学」と連携した施策が上位を占めています[図表7]。中堅企業を見ると、「大学主催の学内セミナー」が51%と唯一の半数超えとなっているほか、「インターンシップの活用」、「キャリアセンター・就職部訪問」がともに47%と高い割合となっています。そのほか、「内定者の活用」(30%)、「逆求人サイト」(23%)なども、他の企業規模より高くなっています。
中小企業では、上位4項目は全体と全く同じ順位となりましたが、「内定者の活用」(8%)、「大学別セミナー・OB/OG懇談会」(8%)の割合は他の企業規模の半分以下となっています。その反面、「新卒紹介」は大企業の3%に対して17%と、比較的高い割合になっています。採用担当者のマンパワー不足を補うためもあるでしょうが、採用人数が少ないために、マスに向けた採用活動を行うよりも「新卒紹介」のほうがコスト的にも効率的だということもあるのでしょう。
以下、ターゲット層採用のための具体的な施策内容を抜粋して紹介します。大学を通じての施策を挙げるコメントが多く見られます。
・内定者の学校とのつながり強化(301~1000名、不動産)
・大学との関係構築の強化(1001名以上、サービス)
・キャリアセンターへの訪問、大学主催の学内セミナーへの参加(300名以下、メーカー)
・キャリアセンターとの関係強化(301~1000名、IT・通信)
・学校訪問し、学校とのつながりを強化。学内説明会への参加を増やしている(300名以下、IT・通信)
・大学訪問でキャリアセンターの担当者に斡旋してもらう(300名以下、メーカー)
・特定の大学様とのお付き合いが深いため、学内企業説明会⇒個別説明会を密にしている(301~1000名、メーカー)
・学内説明会の充実(301~1000名、サービス)
・学内企業説明会への積極的参加(300名以下、メーカー)
・国公立大学対象の合同説明会への参加(301~1000名、IT・通信)
・人事部門だけでなく内定者を含め社内の人間との接点を増やす(300名以下、サービス)
・説明会のブラッシュアップ(301~1000名、商社・流通)
・中途採用メインへの切り替え(300名以下、運輸・倉庫)
・個社でなく、グループ企業全体としての就職イベント(301~1000名、商社・流通)
・ダイレクトリクルーティング、新卒紹介(300名以下、メーカー)
・リファラル採用(1001名以上、メーカー)
・理系限定インターンシップの実施(300名以下、IT・通信)
ダイレクトソーシングも「ヒト」の時代へ
前項の大企業のところでも少し触れた、「2024年卒採用で実施予定のダイレクトソーシング」の結果を紹介します。前掲の[図表2]で見たように、「2023年卒採用で実施したダイレクトソーシング」では、すべての企業規模において「逆求人サイトの活用」が「社員からの紹介」を上回っていましたが、「2024年卒採用で実施予定のダイレクトソーシング」では、中小企業を除いて「社員からの紹介」が「逆求人サイトの活用」を上回る結果となりました[図表8]。もう一つ、「内定者からの紹介」もすべての企業規模で伸びています。大企業では23年卒13%→24年卒21%、中堅企業では23年卒12%→24年卒26%、中小企業でも23年卒4%→24年卒9%といった状況です。内定辞退が大きな採用課題となる中、応募学生へのグリップ力をいかに強化していくかが重要です。「ヒト」を介して少しでもつながりのある応募者を増やしたい、また自社をよく知る「ヒト」のフィルターを通すことでミスマッチを減らしたいという思惑が、この変化をもたらせているものと推測されます。
DX化が進めば進むほど、企業の人事部門には、自社の社員に対してよりヒューマンな対応が求められる、効率化で空いた時間は社員に向き合う時間に充てていくべきだといわれています。採用においても、「よりヒューマンになるべき」という流れは変わらないということなのでしょう。