退職したアルバイトの情報漏洩をいかに防ぐか?

第9回 学生アルバイトからの情報漏洩を防ぐ方法
たとえば、就職活動で競合他社の面接を受けた際にアルバイトの経験として、これまで働いた企業の内情を話してしまうことがあります。こうした退職後の情報漏洩を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?

 通常、アルバイトであっても正社員であっても、退職してしまえば労働契約は消滅します。そのため、退職後の情報漏洩を止める法律はありません。ただし、きちんと誓約書をとっていれば、退職後の「秘密保持契約」が認められる場合もあります。

【秘密保持契約とは】
営業秘密や個人情報など業務に関して知った秘密を第三者に開示しないとする契約。機密保持契約、守秘義務契約ともいう。

自社が守りたい事柄が何かをきちんと整理する!

第9回 学生アルバイトからの情報漏洩を防ぐ方法
秘密保持契約を結ぶための誓約書はどのように作成すればいいのでしょうか? ポイントは、企業内部にとどめておきたい情報をきちんと特定して記載することです。

【秘密保持義務の対象となる事例】
●接客業の場合
(例)顧客情報、接客ノウハウ、ターゲット層など
●飲食店の場合
(例)来客情報、調理技術、レシピなど
●塾講師の場合
(例)生徒の個人情報、指導方法など


なお、「職務上知り得た情報」のように大ざっぱな定義付けで記載すると、営業秘密の要件である秘密管理性が否定され、不正競争防止法による保護を受けられない可能性があります。くれぐれもご注意ください。

 誓約書を提出してもらうタイミングは、退職時に限りません。入社時は言うまでもありませんが、たとえば、飲食店のアルバイトの場合、ホールからキッチンへ異動し、重要な調理法、レシピ、仕入れに関する情報など、新たな秘密情報を扱うようになることもあるでしょう。その時は、ぜひ誓約書を提出してもらい、、漏らしてはいけない事柄を具体的に伝えておきましょう。これも、秘密管理性が認められるために重要なポイントです。

情報漏洩が起きたとき、リカバリーはできるのか?

では、もしも情報漏洩が起こってしまったら、企業はどう対処すればよいのでしょうか?

 基本的に、一度表に出てしまった情報は消し去ることができません。特定の人物や顧客に迷惑をかけてしまえば、「悪いのは従業員」ではすまされないのです。企業側にも管理責任や監督責任があるため、いち早く原因を調査し、謝罪することが大切です。

 ネットに情報が投稿されてから炎上するまでの時間は、早ければ数時間、遅くとも数日中です。早急な鎮火のためにも、企業名でのエゴサーチはもちろん、まとめサイトやニュースサイトをチェックしたり、RSSリーダーなどを使ったりして日頃からこまめに情報収集をしておきましょう。

 もう一つ、炎上した際に企業を悩ませるのが、ネットで情報を知った人が電話やメールで苦情、問い合わせを寄せてしまうこと(ネット用語でいう「電凸」「メル凸」)です。突然こんな事態が起きれば、パニックにならない企業のほうが珍しいでしょう。しかし、下手な対応をすれば、今度は「こんな対応をされた」という情報がネットに書きこまれ、火に油を注ぎかねません。

 万が一の事態に備えて、あらかじめ、炎上した際のマニュアルの策定、電話やメールでの苦情、問い合わせに対するエスカレーションフローの整備などを準備しておくことが肝心です。もちろん、炎上対策を指南する業者に頼んだり、過去の炎上事例などを参考にしたりするのも手です。

情報漏洩をさせないことは、学生の経歴を守ることでもある

最後に、情報漏洩の研修を行う際、学生たちにぜひ伝えてあげてほしいのは、うかつな情報漏洩を行えば、本人の経歴にも傷がつくということです。

 過去には、匿名での漏洩にもかかわらず本人情報を「特定」され、氏名はおろか、顔写真、住所、果ては家族の写真までネットに晒された例もあります。刑事罰や民事訴訟を免れたとしても、本人は手ひどい社会的制裁を受けることになるのです。特に学生は、いずれ就職活動を行います。実名が炎上の形で晒されれば、就職で不利になることは免れません。

 何気ない投稿であっても、情報漏洩に当たる内容だったらどうなるか。それを徹底して教えることは、本人の経歴を守ることにもつながります。投稿内容に気を配ることは、本人と企業、両方のためになると、ぜひ伝えてあげてください。


提供:インテリジェンス「an report」
http://weban.jp/contents/an_report/index.html

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