女性活躍における「ワーク・ライフ・バランス管理職」への期待

ワーク・ライフ・バランスの向上が「健康経営」を、ヘルスリテラシーへの理解が「女性活躍」を促進させる
もう一つ、見ていただきたい資料があります。「女性のライフスタイルの変化を背景とした月経関連症状と仕事上のパフォーマンス」という研究結果です。出生率の低下により、1940年代には50~100回程度だった女性の生涯の月経回数が、最近では450回以上に増えています。もちろん男女にかかわらず、どんな人でも常時100%のパフォーマンスを発揮できるわけではありません。その時々の気持ちや体調により、パフォーマンスは違ってきます。そういう状況にあって、女性の月経は、パフォーマンスの低下の要因として期間の特定・予測、さらに対処が可能なものですから、会社としてもそれを踏まえた仕事環境を作るなどの取り組みが大事です。最近は、女性が自分の体調の変化を把握し、コントロールするための「ヘルスリテラシー」研修に取り組む企業も出てきましたが、それだけでは十分と言えません。

具体的に月経関連の症状が仕事上のパフォーマンスにどう影響しているかを企業で働く女性400人以上に聞いてみると、「症状あり」と回答した人の9割以上が「パフォーマンスの低下がある」と感じていることが分かりました。しかしその中でもヘルスリテラシーの高い女性は、月経関連症状の自覚のある期間に婦人科検診などを受けていることが多く、それがパフォーマンスの低下の抑制につながっていることも分かりました。この結果を考えれば、女性の月経関連症状抑制のため、自主的な行動を促す環境づくりを企業として支援することは必須と言っていいでしょう。

ここで重要となるのが、自分のワーク・ライフ・バランスを大事にし、同時に多様な部下をマネジメントできる「ワーク・ライフ・バランス管理職」の育成です。日本の管理職は、例えば営業職なら「営業成績が優秀な人」が管理職に登用されます。しかし管理職になると、個人として営業成績を上げるだけではなく、部下が意欲的に仕事に取り組めるように働きかけることが重要になります。つまり、一人のプレーヤーでいる時には営業スキルだけを向上させればよかったわけですが、管理職になると「ヒューマンスキル」が重要になります。部下マネジメントの管理職の役割は、以前と変わっていませんが、例えば、10年前の管理職よりも今現在の管理職の方が、より高度な「ヒューマンスキル」を求められるようになっています。

先ほどもお話ししたように、その人本来のパフォーマンスを発揮できるかどうかの原因は女性の月経だけではありませんし、男女に関係なくパフォーマンスの質は日々異なります。業務だけでなく、部下の仕事以外の様々な事情までを考慮して部下を支援することができる「ワーク・ライフ・バランス管理職」を育成することが、子育て世代の男女の育児・家庭と仕事の両立を可能にするだけでなく、女性従業員の継続的な就業を支援することにつながるのではないでしょうか。

以上、健康に関する考え方の再確認、女性活躍、ヘルスリテラシーから健康職場を支える「ワーク・ライフ・バランス管理職」の重要性などをお話しながら、これからの時代に必要とされる健康経営について考えてきました。繰り返しになりますが、これからの社会で何より大切となるのは「健康」です。「会社や組織が、社員が病気になりやすい環境を改善する」だけではなく、「健康になれる環境を作る」ことが、これからの社会の大前提になるということを覚えておいてください。そして女性の長期的な就業などを丁寧にマネジメント・支援できる「ワーク・ライフ・バランス管理職」を育成することにより、すべての社員が生き生きと活躍できる会社・組織を目指してほしいと思います。

※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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