インドネシアに根付く相互扶助、「ゴトン・ロヨン」の考え

稲垣 隣近所でお互いを支えあうというのは、まるで昔の日本のようですね。

黒田 こちらの精神はもっと強いかもしれません。インドネシア人の「絆」の強さは、彼らがエゴイストを嫌うということにつながります。「ざまあみろ」という精神が一番嫌われる。自分1人が金持ちになったり、1人勝ちしたりすることを嫌う。自分が儲けたらみんなに分ける。その代わり、問題がある場合は自分だけで抱え込む事はしない。親戚、兄弟、友達に話をする。軍隊・警察など、伝手をたどってみんなで解決する。

こちらには、「ゴトン・ロヨン(gotong royong)」という言葉があります。自分が持っているもので相手を助ける、という意味です。日本語にも「相互扶助の精神」という言葉がありますが、インドネシアのほうが断然強いと思います。それからここでは、人のメンツを傷つけることはNGです。悪口を言わない、そして人前で怒らないことが大切です。その他にも私が思う日本とインドネシアの違いをまとめてみました。
第3話:異文化理解のために押さえるべきポイントとは

インドネシアが取り入れた日本の武道精神

稲垣 そんなインドネシアに日本が与えることのできた影響もあるのでしょうか。

黒田 インドネシアでは、日本人の精神や考え方を取り入れようという意識がありました。
1982年頃、マレーシアのマハティール首相が「ルックイースト」を唱え、インドネシア国家警察のスカルジョ将軍が、当時世界一の検挙率を誇っていた日本の警察組織を視察したとき、警察官のモラルの高さの根底には武道精神があると察知して、インドネシアの警察大学の授業に柔道を取り入れようということになりました。

そこで私に白羽の矢が立ち、警察大学校の柔道師範を務めることになります。生徒は士官学校卒業後7~8年の大尉クラスの好青年ばかりで、このエリートたちを鍛え上げることは、この国の発展につながるだろう、と、私も士気が高揚していました。その後、東レは、柔道場の建設など、この国の武道精神の浸透に深く貢献していくことになります。
第3話:異文化理解のために押さえるべきポイントとは

異文化の理解を進めることの大切さ

稲垣 最後に、インドネシアに来てまだ日の浅い方、これから来られる方に、メッセージをお願いします。

黒田 こちらで生活する上で大切なことは、1に身の安全、2に健康、3、4が異文化の理解、5に仕事、くらいで考えてよいと思います。インドネシア人のマネージメントに関わる人は「異文化の理解」という点から、各社で専門家を育成することが大切で、その適任者の駐在期間の長期化が、信頼関係の構築にも役立つものと考えます。
第3話:異文化理解のために押さえるべきポイントとは

インタビューを終えて

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