そういう視点で見た場合、今回私が立ち会った正課プレゼンは、受講した学生の潜在能力を短期間に大きく引き出すイベントとしては、とても有効に機能したと考えています。当初はこの単位をセルフマネジメントスキルの実践の場として設定しており、成果プレゼンはあまり重要視しておりませんでした。発表の内容をその場でフィードバックすることによって、授業全体の振り返りの場として活用することを主目的として設定したわけです。
しかし前述したように、今回は成績評価の必要性から私がすべて立ち会うことにしたのですが、「それならば!」ということで受け入れ企業からもトップの方をはじめとして多くの方が成果プレゼンに参加されることになりました。これによってイベントとしての重み付けがとても高くなり、それが参加学生にとってはとても大きなプレッシャーとなったようですね。これが結果的には、学生たちが限られた時間でできる限り良い結果を出すために全力で取り組むという環境を設定することにつながったようです。
私自身は企業の採用担当をやっているときから企業から評価される学生かどうか、それまでに何かの課題に遭遇しそれを乗り越えることに無我夢中で打ち込み、それを克服した経験の有無が、とても相関関係があるように思っています(ちなみにこれは、社会に出てからも同じように感じています)。そして、このような経験を乗り越えた学生は、成功の喜びを味わいたくて同じような、あるいはそれ以上の難易度の高い課題に取り組もうとする傾向があるように感じています。結果的には、このような経験を多く積む学生と、まったく取り組んだことのない学生とで二極化が進み、それがそのまま就活時の内定の二極化につながっているように感じています。
大学におけるキャリア教育の目的はいろいろあると思いますが、私は大学時代に自律的・主体的にこうした経験を積むことができる学生をどれだけ増やせるかが重要なテーマだと考えております。そして、大学の取り組みとしては、そうした経験につながる機会を増やすこと、そして課題解決に必要なスキル修得を支援することに現時点では重きを置いています。前述したように、キャリアデベロップメント実践という科目では、スキル修得の実践の場として重きをおいて設定していました。しかし今回気づいたことは、これらに加えて単なる機会を提供するだけではなく、その場の設定、具体的には学生のレベルに応じて適度な負荷をかけること、そして取り組んだ学生の結果に対して適切な助言と褒めることで、学生自身が大きな充実感と成功体験を実感し、成長促進の場としてより有効に活用できることがわかりました。怪我をしないギリギリの負荷のトレーニングを集中的に行い、その後適切な栄養と休養を摂取すると筋肉が効率的に成長するように、有効な人材育成の方法があるのではないかと考えています。今回の取り組みは、そのあたりについてとても多くの気づきを与えてくれたように感じています。
では今回はこのあたりで。
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