情報を漏洩させないためのルール作り
では、学生アルバイトに情報漏洩をさせないためにはどうすればいいのでしょうか?まず心がけたいのは、そもそも情報を「取得」させないことです。基本的な話ですが、顧客情報や顧客カルテ、販売ノウハウ、料理レシピなど、企業にとって重要な情報は、紙資料でも電子データでも、きちんとロックをかけ、簡単には閲覧できないよう徹底的に管理してください。また、職務上必要がないのであれば、働く場所へのケータイやスマ-トフォン、タブレットPCなどの持ち込みを禁止するのも有効です。
とはいえ、目で見たり、耳で聞いたりする「取得」は制限できません。有名人の来店を知ったり、重要なノウハウを学んだりすることが、職務上は避けらないこともあります。
そこで、大切なのが学生たちの教育です。
研修で情報漏洩は悪いことだときちんと教える
過去に情報漏洩に当たる内容を投稿し、炎上事件を起こした学生アルバイトたちは、おそらく悪気があったわけではありません。安易な漏洩が何をもたらすかを彼らがきちんと知っていれば、事件への発展は防げたはずです。新しく学生アルバイトを雇用したら、まずは研修を開き、情報漏洩が企業にとって非常に重大なリスクにつながることを徹底して教えましょう。場合によっては、民事訴訟の提起や刑事告訴で彼ら自身が企業から責任を追求されることもあり得ると伝えてください。一種の抑止力になります。
「そうは言っても、脅しすぎると信頼関係にヒビが入るのでは……」という声もよく聞きます。そんな時は、外部のコンサルや弁護士、弁理士、行政書士などの専門家たちを活用しましょう。彼らは、第三者の立場から厳しく言って聞かせることができます。一定のコストはかかりますが、研修に参加するスタッフの数が多い時などは、ぜひ検討してみてください。
また、研修を行った際は、必ず「レポート」「感想文」を提出してもらいましょう。本当に内容を理解できているかどうかを確認するだけでなく、本人が問題を起こした時に「事前に研修を受け、情報漏洩が禁止であることを理解していた」という証拠を残すことができます。
情報を漏洩されてしまったら、法律は企業を守ってくれるのか?
さて、先に民事訴訟の提起や刑事告訴について触れました。アルバイトスタッフに情報を漏洩されてしまったら、法律はどこまで企業を守ってくれるのでしょうか?まず、情報漏洩を取り締まる法律には「不正競争防止法」というものがあります。「営業秘密」に該当する情報を勝手に漏洩した場合、民事上・刑事上の責任を問うことができる法律です。
実際に、企業の情報が勝手に漏洩された場合、問題になるのは「漏らした内容が、本当に“営業秘密”なのかどうか」です。
【営業秘密の3条件】
(1)秘密管理性
→秘密として管理されている情報であること。
(2)有用性
→事業活動に有用な情報であること。
(3)非公知性
→公然と知られていない情報であること。
漏らされた情報の内容が営業秘密と認められれば、企業は法律の保護を受けられます。
では、芸能人の来店をTwitterで発信してしまったケースではどうでしょうか? 「芸能人の来店」は、プライバシー保護という意味では絶対に漏らしてはいけない情報です。ただ、営業秘密という観点から見ると、果たして「有用性」や「非公知性」があるかは疑問が残ります。
ハッキリ言えば、学生アルバイトが行うような情報漏洩において、法律が適用される可能性はきわめて低いのが実情なのです。しかも、仮に学生を訴えたところで、刑事では有罪となる可能性が低く、民事でもせいぜい微々たる賠償金が取れるだけ。漏れた情報は回収できず、企業のブランドや信用も戻ってこないのです。
問題は、学生相手の訴訟に勝てるか否かではありません。大切なのは、不正競争防止法を抑止力として活用することで、漏洩を事前に防止することなのです。