根強い終身雇用志向

次は、学生の就業意識について見てみましょう。「最初の会社で定年まで働きたい」「3回くらいまでなら転職してもよい」「回数にこだわらず、転職してもよい」「いずれは起業したい」の4択で聞いたところ、最も多かったのは文系・理系ともに「最初の会社で定年まで働きたい」(以下、終身雇用志向派)で、それぞれ41%、43%と4割以上となっています[図表3]。「終身雇用の崩壊」「若者のキャリア意識の変化」「ワーク・ライフ・バランス重視」などが叫ばれる中、今でも終身雇用志向派が一定数いることがうかがえます。一方、「3回くらいまでなら転職してもよい」「回数にこだわらず、転職してもよい」を合わせた転職志向派は、文系56%、理系53%と5割台となっています。
[図表3]就業意識
では、この両者の割合はコロナ禍の期間をまたいでどう変化しているのでしょうか。2018年卒の学生を対象として2017年に実施した調査から今回の調査までの経年変化を、文系学生について見てみましょう[図表4]。2018年卒では、終身雇用志向派が55%と過半数を占めたのに対して、転職志向派は42%と、今回(2025年卒)の調査とほぼ逆の割合となっています。終身雇用志向派は、2022年卒と2023年卒の35%まで減少を続け、その後ここ2年間は増加しています。逆に転職志向派は、2022年卒の62%をピークに、その後は減少しています。大企業では新卒一括採用を頼みとする割合は年々減少し、キャリア(中途)採用の人数が新卒採用と同程度、あるいはそれを上回るケースも出てきているなど、昨今の人材流動化の流れに反する結果となっているのは、少し意外と言えます。
[図表4]文系学生の就業意識の推移
このような中で、ほとんど変化を見せなかったのが「いずれは起業したい」の割合です。今回の調査では文系・理系ともにわずか3%でしたが、文系について2018年卒以降の推移を見ても3%の年が多く、2025年までの8年間で2~4%の中に収まっています。東京大学では、2005年に「東京大学アントレプレナー道場」を開講し、これまでに百数十人の起業家を輩出しているほか、東京科学大学(旧東京工業大学)、早稲田大学、名古屋大学、大阪大学など、起業家マインドを醸成しようと活動している大学もありますが、大学全体で見れば起業家マインドを持った学生はまだまだ少ないと言えそうです。“寄らば大樹の陰”の意識で安定志向が強い――それが日本の大学生の特徴なのでしょう。

次に、入社後、将来就きたいポジション(役職)についてどう考えているのかを見てみましょう。最も多かった回答は、文系・理系ともに「事業部長・部長」で、それぞれ37%、43%と4割前後となっています[図表5]。次いで多いのは、理系では「取締役・執行役員」(18%)、「次長・課長(マネジャー)」(13%)です。文系では理系と反対に、「次長・課長(マネジャー)」(19%)が多く、次いで「取締役・執行役員」(15%)となっています。「社長(起業含む)」は、文系で6%、理系では8%となっており、ともに1割未満にとどまります。また、文系では「役職には就きたくない」が10%と、理系(6%)よりも高い割合となっています。
[図表5]将来希望するポジション

企業の人材育成に期待する文系学生

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