「論理性の高い人材」を見極めるには?

企業が実際に求めているのは、「論理的に考えて答えを出す問題解決力」なのだと思います。では、自社にとって本当に必要な“論理性の高い人材”を見極めるにはどうすればよいのでしょうか。

以前、ある本を読んで「なるほど」と思ったことがあります。数学者であり、国立情報学研究所 社会共有知研究センター長である新井紀子氏が書いた『AIに負けない子どもを育てる』(東洋経済新報社)です。新井氏は、数学が苦手な子供たちは問題文を正確に読むことができていない、ということに気づきました。日本語で文章や問題を理解する読解力が低い人は、数学の学力が低くなるのです。そこで、新井氏は問題を理解する基礎的読解力を測定するためのテストを開発しました。

本書には、読解力を測るためのテストの簡易版が付属しています。このテストを実際に私の周囲の何人かに受けてもらったところ、普段から論理的思考力や問題解決力が高いと思われる方が高得点でした。

当たり前ですが、日本人は日本語で考えます。日本語をよく理解して、日本語で考える能力が高いほど、論理的思考力が高くなるはずなのです。基礎的な読解力が高い人は、論理的に物事を理解して考えられる可能性が高くなります。

仕事の中で、お互い日本語でコミュニケーションを取っていても、実は相手が仕事の指示を理解していないというケースが度々起こります。その原因は、メールや口頭による指示を理解する力がないからです。また、問題を理解する力があれば、何が問題なのかを考えることができます。問題を考えることができれば、問題を解くことができます。

一つの可能性ではありますが、日本語読解力が高い人は、本当の意味で論理的思考力が高いといえます。論理的思考力の高い人材を採用したいなら、志望者に対して新井氏が開発したリーディングスキルテストをやってみて、読解力を測ると良いでしょう。

論理的思考より大切なもの

仕事を進めるために論理的思考力は重要ですが、それが全てではありません。論理的思考力だけを重視していて、その他の能力やスキルが重視されなくなる、という場面を多々目にしてきました。

そもそも人間は、言葉だけで考える生き物ではありません。論理だけで考える生き物でもありません。イメージで考える人もいれば、体の感覚で物事を考える人もいます。人はそれぞれに認知特性があります。同じ情報を見聞きしていても、捉え方は人それぞれです。そして人には感情があります。

不確実性の高い現代においては、論理的思考力と同じくらい、チームで物事に取り組む力が重要です。チームで仕事に取り組むことができれば、どんな状況でも乗り越えることができるでしょう。そのためには、相手への共感がとても重要です。いくら論理的思考力が高くても、チームで仕事ができなければ意味がありません。

論理的思考力の高い人材は、テストで比較的正確に見極めることができます。しかし、論理的思考力が全てではないことを忘れないようにしましょう。
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