AI化の波を恐れることなく、いまやるべきことにフォーカスせよ!
セミナーを締めたのは、オズボーン氏、辻井氏、石山氏によるパネルディスカッション(ファシリテーターはITジャーナリストの松村太郎氏)。ここで語られたのは、まずはAI研究者から企業への働きかけの重要性だ。たとえばオズボーン氏は「AIに何ができるのかを整理し、ビッグデータが持つポテンシャルを企業サイドに伝達していくことが大切」とし、石山氏は「誰もAIの導入など考えていない分野・領域の中にも、社会的課題の解決につながるアセットを持つ企業はある。そことパートナーシップを組む」という方法論を披露。産学の結びつきを強めることで、AIが世界を良くする可能性は広がり、思いもよらなかったビジネスチャンスも生まれる、と説く。いっぽうで辻井氏は「日本の企業は国内のマーケットに固執しすぎ。日本で結果を出してから世界進出という考えは通用しない。他国のスタートアップは最初から世界市場を見据えている」と、企業側の意識改革を促す。
面白いのは、AIの発達によって逆に雇用機会が増える可能性がある、という点でも各氏が一致していることだ。「相手の背景まで読み取ったうえでの説得・交渉・メンタリングなど人間にしかできないことはまだ多い」「時給の安い職種はAI化に投資しても見合わない」「人と人との触れ合いが付加価値になる職業もある」「かつて農作業の自動化によって農業人口は劇的に減少したが、農業から離れた人たちは都市部に出て新たな職業や雇用を生み出した。歴史が繰り返すなら、AI化を通じても同じようなことが起こるのではないか」というのが、その理由だ。
いま働く人々も、彼らを雇用する経営者も、AI化の波にただ怯えたり踊らされたりすることは避けるべきだろう。AI化によって代替可能なタスクや解決できる問題を正確に把握し、新たに創出される仕事領域や雇用を予測。個人として必要なスキルを身につけ、企業としては“AI時代”に求められる人材を育成する。そうした戦略的な行動こそがいま重要なのだと感じさせるセミナーであった。
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