日系企業の課題解決の知見が蓄積していく

2017年9月に、エイムソウルの子会社であるPT. Bridgeus Kizuna Asiaを立ち上げ、本格的に人事のコンサルティングを展開することになった。この手の仕事は一度回りだすと、どんどん情報が集まってくるため、さらに課題解決のノウハウがたまり、解決方法が幅広くなる。お客様に恵まれ、いろんなご相談を受けるようになった。

日本人がこだわる仕事の基本(時間管理・報連相等)の徹底をはじめ、管理職のマネジメントマインド・スキルの向上、従業員のエンゲージメントを高めるための会社のPrinciples(行動規範)の浸透、ローカルスタッフのコミュニケーション力の向上、自社商品知識の習得など、さまざまな課題解決をしてきた。いまではすっかり、インドネシアでも日本と同じ感覚で、お客様とディスカッションしながら、課題と解決策を見つけていく仕事の仕方ができるようになった。

2014年から2年間はインドネシア100%の生活だったが、日本の会社も広げていく意思決定をしたため、2016年からは日本とインドネシアを毎月行き来する生活スタイルになった。振り返れば、インドネシアでは本当に素晴らしい出会いに恵まれ、一生の付き合いになるであろう仲間とも出会うことができた。いまや私にとって、ジャカルタは第二の故郷と言える。
第14話:稲垣のインドネシアでの挑戦(最終回)

「共感」とは「適応力」だ

Rickから「The most importance of human communication is “Empathy”. (人の会話の中で最も大事なのは、“共感する力”だ)」という言葉をもらい、4年半が経った。

インドネシアでは、いろんな日本人・インドネシア人に出会ったが、このEmpathy Communicationが得意な人と不得意な人は、分かれるように思う。

この分野に関し、東大社会心理学の博士達とチームを組み、1年半ほどかけて研究を重ねてきた。さまざまな国の人たちにインタビューやサーベイを実施していくうちに、我々は、Empathy Communicationの正体を「適応力」と定義した。相手に共感し、自分をその環境に適応させていくことこそ、グローバルで活躍する人に必要な素養だ。この研究結果は、また別の機会を設けて、皆さんに共有したいと思う。

一方、インドネシアから我が国日本に目を向けると、日本もいま、グローバル化を迫られている。2018年は、外国人労働者が過去最高の140万人を超えた。2019年4月に施行される改正入管法によって、さらに外国人労働者の受け入れは加速すると見られる。

私自身、インドネシアの地で“外国人”として生活をした4年半を経て、日本人に対し感じることは大きく2つある。それは、「世界に誇るクオリティを追求できる日本人の価値観・行動特性の素晴らしさ」と、「異文化を受け入れる適応力についての課題」だ。

今後、私は、インドネシアのみならずASEAN、日本国内で、日本人が世界で存在意義を示すための、この「適応力」の向上に力を注ぎたいと思っている。

編集後記

いまの日本は人手不足、グローバル化の対応により、海外・外国人との距離感が急速に縮まりつつあります。来月からこのコラムは、【日本流グローバル化への挑戦】にテーマを衣替えし、インドネシアにとどまらず、海外全体を視野に入れた、日本人のグローバル化・ダイバシティを考えるコラムへとバージョンアップいたします。

記念すべき第1回は、早稲田大学政治経済学術院の白木教授との対談をお届けします。白木教授は日本企業のグローバル人材戦略の第一人者であり、非常に示唆に富んだお話をいただきました。ご期待下さい。

このコラムを1年2ヵ月、14回にわたって続けられたのは、対談に応じていただき深い示唆を与えていただいた方々、毎月ご愛読頂いたり、感想を寄せて頂いたりした皆様、そして、締め切り間際まで編集に付き合っていただいたHRプロ編集部の皆様および私のアシスタントのお陰です。深くお礼申し上げます。
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