4社に3社が「管理職の能力向上」を課題に
人材育成上の課題を聞いたところ、トップは「管理職の能力向上」で74%と4社のうち3社が課題と考えている。かつてのように部下の管理(マネジメント)に徹していられる余裕はなく、一プレイヤーとしてもトップの成績を求められるのが現代の管理職である。
一プレイヤーとしては高い評価を受けながらも、部下のマネジメントや育成にまで手が回らず、結果的に若手社員の成長スピードが遅くなっている。次いで多いのは「中堅社員の能力開発」で62%。
図表1:人材育成上の課題
具体的なコメントを見てみよう。
「管理職のマインド、能力、知識の向上(が課題)」
「管理職層の教育不足、次期管理職候補の不足」
「管理職層の、研修に対するモチベーションが低い」
「プレイングマネージャーがほとんどの為、部下のマネジメントができない」
「管理職のマネジメント力、社員の自律的キャリア開発志向の欠如、およびそれらをサポートする仕組みの欠如」
「ミドル層の管理能力向上、中長期的視点での選抜、自燃型人材の育成」
「社内の高齢化が進み、管理職のポジションが少なくなっていくことによって、社員のモチベーションが低下してきている」 「プレイングマネージャーがプレイヤー業務に時間をとられすぎ、部下を育成する時間がなくなっていること。結果として部下育成の意識が低い従業員が次の管理職となり、悪循環となりつつあります」
「社員の大半がミドル層となり、今後会社の中でのキャリアパスが描きづらく、モチベーションをどのように維持し、活用していくべきなのか課題と感じる」
「中堅社員より上位について、今までやってきたところを視点を変えたビジネス創造やコンサルティングなど、上流へのシフトを求められている。職種転換も含めて、何をどんな順番でやっていくことが効果的なのか測りかねているのが実態」
中堅・大企業で最も多い年間予算は「1000~3000万円未満」
人材育成にかける年間予算を聞いたところ、当然従業員規模に比例する形となった。
中堅・大企業で最も多い年間予算は「1000~3000万円未満」。中堅企業では27%で、「1000万円以上」の小計は33%と、ちょうど3社に1社の割合になる。一方、大企業では「1000~3000万円未満」が30%、「1000万円以上」の小計は65%にも達する。「1億円以上」とする企業も2割以上ある。
中小企業では、「20万円未満」が22%と2割を超える。これらの企業では、ほとんど予算をかけていないということになる。
図表2:人材育成にかける年間予算
中小企業の1割は新入社員向けの育成予算を持っていない
新入社員1人あたりにかける人材育成予算を聞いたところ、最多は「50,000~100,000円未満」という結果に。企業規模により新入社員の人数は異なり、総予算は人数に応じて変動するが、1人あたりではそれほど規模による差異は見られない。ただし、人材育成予算が「0円」との回答があるのは、中小企業のみ。しかも1割程度もある。これらの中小企業では、育成プログラムはOJTだけなのかもしれない。
図表3:新入社員1人あたりにかける育成予算
若手社員研修にかける予算は低調気味
若手社員1人あたりにかける人材育成予算を聞いたところ、かなりばらける結果となった。最多の回答は「10,000~20,000円未満」ではあるが、19%と2割に満たない。
新入社員研修と比較すると、若手社員にかけている予算は総じて低い。
図表4:若手社員1人あたりにかける育成予算
部課長クラスの研修予算が最大
新入社員、若手社員、部課長クラスと見てきたが、予算が最大なのがこの「管理職向け」。最多は「1~10,000円未満」(17%)ではあるが、僅差で「50,000~100,000円未満」(16%)が追っている。
最大の課題が「管理職の育成」というだけあり、実施率が高いこともあるだろうが、プログラム単価が他の階層よりも高額なものが多いことも影響しているのであろう。
図表5:管理職1人あたりにかける育成予算
経営者層には「研修なし」が4割
階層別で最後に聞いたのが「経営者層」。予算ゼロが実に4割にも達している。欧米では、経営者に対してもコーチングをはじめとした育成プログラムを実施することがほとんどであるが、日本では育成はあくまでも従業員に対してのものであって、経営者層に育成プログラムは必要ないと誤解されがちである。
図表6:経営者層1人あたりにかける育成予算
中小企業で多い育成予算の増加
人材育成にかける予算の増減では、「ほぼ変わらない」が63%となったものの、「増加」が24%なのに対して、「減少」は13%と「増加」の方が10ポイント以上多い。特に中小企業では、「増加」27%に対して、「減少」はわずか6%と予算増加の企業が多い。
図表7:人材育成にかける年間予算の増減
管理職研修ニーズは強いものの、新入社員研修ニーズは低調に
現在利用している育成サービスでは、「管理職研修」67%、「新入社員研修」63%と、この2つが他のサービスを大きく引き離している。
しかし、今後より利用度が高まるサービスを聞いてみると、「管理職研修」は60%と依然として極めて高いのに対して、「新入社員研修」は17%と46ポイントも落としている。新入社員研修をなくすことはないものの、現在のプログラムを変更することなく来年以降も継続することやプログラムを内製化することを想定しているようである。「新入社員研修」にはそれほどの課題意識を持たれていないことが、ここからも垣間見える。
一方、今後の方がポイントが高い項目もある。「意識改革研修」「コーチング」「モチベーション」「チームビルディング」などである。
図表8:現在利用中のサービスと、今後より強化するサービス
新サービスを導入する際の決め手は、「価格」70%、「講師」59%、「情報提供力」40%、「カスタマイズ力」36%となっている。「サービスのユニークさ」や「実績企業」は意外と考慮されないようである。
図表9:人材育成サービスを採択する際の決め手
【調査概要】
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年10月28日~11月6日
有効回答:305社
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