デジタル化時代の人事部門変革
 〜人事が一刻も早くデジタル化に着手すべき理由とは〜

KPMGコンサルティング株式会社 執行役員 パートナー
大池 一弥 氏

デジタルテクノロジーの進展により、ビジネス環境は急速に変化を遂げている。それは、人事領域においても例外ではない。しかしながら、人事領域に新たなテクノロジーを積極的に取り入れ、かつ使いこなしていると言える企業は、まだ少ないのではないだろうか。KPMGインターナショナルが2018年に世界64カ国1,200名の人事部門リーダーに実施したデジタル化に関する調査によると、テクノロジーを率先して取り入れる「先駆者」と、成り行きを見守る「傍観者」の二極化をしているという。「傍観者」の立場を続けた場合、企業や人事部門には何が起こるのか。デジタル時代を生き抜く企業の人事部門は、どうあるべきか。KPMGコンサルティング株式会社の大池 一弥氏に話を伺った。

人事部門のデジタル化を阻む要因とは何か。

今回、世界64カ国の企業のHRリーダー約1,200名に、HR業務のデジタル化に関する調査を実施されたと伺いました。まずはこの調査を実施した背景について聞かせてください。

大池氏

今、デジタル経済への急速なシフトがグローバルで大きなテーマとなっています。しかし、人事部門は企業の他の部門、例えばサプライチェーンや財務経理と比較すると、デジタル化が少し遅れている傾向があります。そうした中で、急速なデジタル化が人事部にどのような影響を与え、今後どのような展望や施策が必要になるのか、グローバル全体の潮流を把握するために、調査を実施いたしました。

調査結果を拝見したところ、HRリーダーには、デジタル化に積極的な「先駆者」と、成り行きを傍観する「傍観者」がおり、二極化しているとのことでした。「先駆者」と「傍観者」は、何が原因で分かれてしまうのでしょうか。

大池氏

企業によってその原因は異なりますが、ひとつ大きな理由として挙げられるのが「組織風土」です。先進的なものにどんどんチャレンジする風土がある企業は、やはりデジタルテクノロジーにおいても「先駆者」となります。たとえばAIを活用した製品デモをお見せした時に「面白いね」と人事部長や役員が興味を示す企業は「トライアンドエラーで、まずは採用領域や人材育成領域から入れてみようか」となることが多いです。

一方、保守的な企業は、デジタルテクノロジーに対して懐疑的です。人事の領域は人を扱うため、「AIに頼るなんて、社員に対して失礼だ」と考えていたり、「自分たちが築いてきた社内ネットワークと勘」に高い価値を見出していたりする企業は、テクノロジーの導入も後手に回り、「傍観者」になりがちな傾向があります。

次に、日本の人事部門の状況について伺います。「人事部門がデジタル化の転換期を迎えた、または迎えている」と回答したのは、グローバルでは67%であるのに対して、日本は48%。日本の人事部門は、デジタル化に向けた認識や計画がグローバルに比べて低い状態にあるということでした。特に日本企業の人事部門において、デジタル化を阻む要因は何でしょうか。

大池氏

まず、日本の組織文化として、職務を超えて行った仕事が評価されにくいことが挙げられます。これは、新しいことに挑戦しにくいことを意味します。

次に、人事がまだまだ「アナログ的」であること。とりわけ伝統のある大企業の場合、人事は密室で決められ、その経緯や根拠は属人的な判断や経験に依存しがちで、客観的データの利活用や社員とのデータ共有は進んでいません。つまり、データをオープン化するデジタル化とは真逆なところがあるのです。

さらには、デジタル人材の不足という問題もあります。今デジタルテクノロジーを導入したとしても、使いこなせる人がいないのです。

インタビューはまだまだ続きます。

  • 今、日本の人事部門がさらされている危機
  • 危機を回避するために、HRリーダーが取り組むべきこと
  • 「経営に資する人事」であるために、テクノロジーを武器にする

大池 一弥 氏
KPMGコンサルティング株式会社 執行役員 パートナー

PwC、IBM Business Consulting Services、IBM、Mercerなどで22 年以上にわたり組織・人材マネジメント領域で手腕を発揮。現職では人事戦略策定、人事制度設計、グローバルタレントマネジメント、人材開発・人材育成、人事システム導入支援、働き方改革支援の領域で数多くのプロジェクトを推進する。

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B18 9/20(金)16:50 - 18:00 人事部門の未来:先駆者かそれとも傍観者か
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