『40歳定年制』の実現のためには、経営者サイドからもアクションを起こしていくことが重要ですね。
柳川氏
そもそも個々の能力開発がないと会社も困るはずなのです。現状のままではいられないと、多くの経営者は感じているのではないでしょうか。今後は年功序列や終身雇用といった制度・ルールを見直し、雇用の仕組みを変えていく企業がますます増えるでしょう。
会社が用意した雇用条件に従業員が合わせるのではなく、個々に適したものを会社が提供していくという動きが加速するかもしれませんね。
柳川氏
近年は人手不足ということもあり、今いる社員を囲い込もうとする企業が多いのも事実です。ですが、もうそんな考えは通用しません。「良好な制度・環境を用意して働く人たちを惹きつける」という発想が大切。そうしないと人材は集まらないし残ることもありません。
従来の雇用習慣で業績を残してきた企業だと、発想やシステムを変えることは難しいようにも思えます。
柳川氏
確かに「生涯面倒を見ますよ」と社員に約束してきたわけですから、その仕組みをいきなり変えてしまうと期待を裏切ることになります。大きな不利益ができるだけ生じないシステムを考え、移行期間を設けることも必要でしょう。
終身雇用・長期雇用だからこそ得られるメリットも無視できないのではありませんか。
柳川氏
長期的な雇用によってチームワークが生まれることは事実。スポーツでもそうですが、日本には、個々の力は高くなくても団結力を武器に何かを生み出す、勝ち進むという文化があります。「いわなくともわかる関係」を長期的に築き上げていくことは組織としてもメリットがあり、この強みは生かすべきです。ですから、すべての企業にとって短期契約がベストというわけではありません。
とはいえ、まったく顔ぶれを入れ替えないとチームとしての力は低下していく恐れもあります。
柳川氏
固定化しすぎることは確かに危険です。技術や環境が変化していくのに何十年も同じチームでいいはずはありません。またグローバル化やM&Aによって社内に海外のカルチャーが入ってくるケースも増加しており、既存の力に新たな力をどう融合させるかも課題となっています。実はここも日本の企業が苦労している部分。あらかじめ受け入れ余地のあるオープンなチームを作っておき、チームワークを維持しながら変化に合わせてメンバーを組み替えていくことが重要となります。だからこそ雇用期間も柔軟に考えるべきなのです。
今回のHRサミット2019では『AI時代に求められるこれからの働き方と組織のあり方』というテーマでご講演いただく予定ですが、そのポイントを一部ご紹介いただけますか。
柳川氏
今日お話ししたこととも関連しますが、まず“考える”ことの重要性ですね。もう誰かが「こうしなさい」と教えてくれてそれに従っていればいい時代ではなく、向き不向きを客観的に考え、自分自身でキャリアを組み立てるべく行動することが求められています。ただ、今後具体的にどのような能力が必要になってくるのかは見えにくい時代ともいえます。AI化やデジタル化が進む社会の中でどのように経験を積んでいくか、培ってきた能力を新しい環境・現場でどう発揮するか、個々が経験を積み能力を発揮するための組織変革の必要性……といった点について、お話しさせていただこうと思います。