【第一部】グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント・産業カウンセラー　田中淳子氏

若手を育てるOJTの「制度化」

21世紀に入ってから業界を問わずOJTを制度化する企業が増えてきました。その背景は大きく分けて２つあります。 １つは、職場の変化が非常に大きく若手がなかなか育たなくなったこと。マネージャーのプレイヤー化、お節介な他者の激減、知恵袋的な人の不在、“新人仕事”の減少、短納期・高品質・高度な要求、若手を構うほど余裕のない先輩や上司…といった要因が、「周囲が寄ってたかって育ててくれる時代」から「自然には育たない時代」へと変わってきました。 そしてもう１つは、様々な要因で学ぶ機会が激減していることです。クリーンデスク、セキュリティ強化、アウトソーシング、コンプライアンス、コミュニケーションの電子化、役割の細分化、ネット社会——これらの要素はすべて若手の育成にはマイナスに働きます。つまり「漏れ聞こえてきた」情報が減少し、「門前の小僧」には“経が聞こえない”現代と言えるでしょう。

OJT制度の一般的な体制

若手に対しては「１対１」でOJTトレーナーがアサインされるのが一般的ですが、注意すべきなのは、周りの人たちが無関心になり、OJTトレーナーが孤立してしまうことです。よって部門長やOJTの担当者は、「みんなで育てていこう！」と声をあげ、組織を挙げて成長を支援する必要があります。実際に多くの人たちを巻き込んで育てたほうが、若手の成長・能力向上に寄与するという研究結果もあるほどです。

OJTがもたらす効果は「共育」

若手を育てながら、自分も成長する。例えば弊社が2007年から研修のお手伝いをしている製薬会社様では、OJT制度立ち上げ当初は「私が若い頃はこんな制度はなかった」「若手に甘すぎる」といった厳しい意見が多く出ました。ところがOJT制度がスタートしてしばらく経つと、その方たち自身も日々成長していることを実感され、結果的に組織全体が強くなるという良いサイクルが生まれるようになり、このことを、共に成長する＝「共育」と呼んでいます。

現場の学びを支える「経験学習」

最近、OJTの中で色濃く取り入れられているのが「経験学習」です。大人の成長は、「70：20：10」で成り立つというデータがあります。70％は自分自身の直接経験、20％は他者の経験や他者からのアドバイス、残りの10％は研修や読書。つまり90％は自分や他者の経験が関わっているのです。 そこで重要になってくるのが「経験学習のサイクル」。
具体的経験（やってみる）
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省察的観察（ふりかえる）
　 ↓
抽象的概念化（一般化する）
　↓
適用（使ってみる）
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具体的経験

こうしたサイクルをOJTの中にうまく取り入れると、より効果的でしょう。