6月4日 (水) 12:10 - 13:10(提供:株式会社マネジメントベース)
大人の発達障害、採用と既存社員での対応法
弊社調査データにみる実態と、働きやすい組織づくりへ
弊社は経営コンサルティングを行っていたメンバーにより2006年に創立しました。主には組織診断に基づいて、人事制度、組織改革、業務改革などのご支援をしています。アセスメントとしては従業員満足度調査やモラルサーベイなどの組織診断、多面評価・360度、採用適性検査、ストレス診断などの個人アセスメントを提供しています。特に適性検査ではこの5年で約300社の企業様にご導入いただいておりますが、そのなかで最近、「大人の発達障害」という問題意識が上がってきています。そこで今回、弊社の調査結果に基づき大人の発達障害に関する傾向と対策について皆様と共有したく考えています。
- 発達障害とは?
- 厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス」総合サイトによると、『発達障害とは生まれつきの「特性」で「病気」ではない、生まれつき脳の発達が通常と違っているために、幼児のうちから症状が現れ、通常の育児ではうまくいかない。成長するにつれ、自分自身のもつ不得手な部分に気づき、生きにくさを感じることがあるかもしれません。』とされています。発達障害はいくつかのタイプに分類され、国際的な診断基準では「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と呼ばれています。自閉症、アスペルガー症候群など、症状の強さによって診断名は変わりますが、本質的には1つの障害単位と考えられます。典型的には、「社会性(対人関係)の障害」、「コミュニケーションの障害」、「想像力のズレ、こだわり」の3つの特徴が現れます。
言葉の発達の遅れがみられる自閉症、言葉の発達の遅れは無いがコミュニケーションに障害があるアスペルガー症候群、多動・衝動性がみられる注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などを広く含む概念です。
発達障害の特徴としては、複数のタイプが存在し、幅広い多様性があるため、診断が難しく誤診が多いと言われています。環境や育成状況により、あらわれ方も多様で、小・中・高で成績が良く頭が良いと注目されてコミュニケーションなどがあまり問題にならない方が、大学生や社会人になって初めて生き辛さを感じるようになって、自分自身で自覚する方もいます。現時点では生物学的なマーカーがなく、他の疾病のように血液検査をして診断といったことが不可能で、専門医でも診断が難しいと言われています。 - 厳密には1%台、グレーゾーン含めると約10%?
- 独立行政法人 国立精神・神経医療研究センターによると厳密な意味での発達障害(PDD)は0.9〜1.6%、顕著ではないがPDDの特性を示す者(グレーゾーンを含む)は約10%、文部科学省による学習・行動面で著しい困難を示すと判断される通常学級に通う小中学生(グレーゾーンを含む)は6.5%です。弊社マネジメントベースで2011年に全国千名以上の一般成人を対象に実施したネットリサーチでは、自閉症スペクトラム指数を用いて診断基準を超える人(グレーゾーンを含む)は全体の8.8%でした。これらの結果から、グレーゾーンを含めると約10%の人が発達障害に含まれると言えるのではないかと思います。
今回の議論の対象者となる大人の発達障害と呼ばれる方は、言語発達に遅れがなく、知的能力にも問題がないが、診断基準に照らし合わせると生き辛さを多少感じており、周囲・本人が就職後に認識した人です。 - なぜ、大人の発達障害に着目するのか?
- 上記にあげるよう、グレーゾーン者を含めると約1割に達する人にその傾向が伺えるというボリュームインパクトを背景に、大人の発達障害に着目する理由は大きく2つあります。1つはメンタル不調者を増やさないためです。2つ目は業務パフォーマンス上の問題に対処するためです。
1つ目のメンタル不調者に関してですが、大人の発達障害は2次障害としてメンタル不調を発症しやすいと言われます。「うつ」「アルコール依存症」も発達障害が原因かもしれない。大人の女性で慢性化していて治りにくいうつ病をみたら、発達障害を疑うべき(心療内科医 星野仁彦著「発達障害に気づかない大人たち」より)と言われます。大人の発達障害がうつ病を合併しやすいのは、国内外で広く報告されています。「うつ」と診断されて抗うつ剤を飲んだが治らず、病院を転々として、5年後に発達障害だとわかるケースもあります。メンタル不調、うつになりましたと診断書を持ってくる人の中に、実はこういった傾向を持つ人が少なくはない、ということが結構あるので、メンタル不調者を増やさないという観点から着目すべきと思います。
2つ目の業務パフォーマンスの問題において、職場での大人の発達障害はどのような傾向か見てみましょう。たとえば外資系などで仕事がマルチタスクで進む場合、報告系統が日本と香港、米国本社などと複数になりますが、発達障害の方はマルチタスクが苦手な傾向があります。「中途採用でパフォーマンスの悪い人の特徴をみたら、どうも発達障害傾向でした」ということも聞かれました。ある分野で知識が深く、英語が得意でTOEIC満点に近いという方もいます。
民間企業では面接が厳しいため、試験合格が大きな比重を占める公務員を目指す方も多いようです。ですが仕事では市民の方や周囲の方とのコミュニケーションがうまくいかない方がでてくる。周りを驚かせたり、こだわりが強くて指導が伝わらない、本人が生き辛い、などがあるようです。
レポートはまだ続きます。気になる内容の続きはダウンロードしてお楽しみください。
- データで見る大人の発達障害 発達障害指標で傾向の強い人の割合が8.8%
- 発達障害傾向の高い人は一般の3倍近いメンタル系受診相談経験がある
- どう対応するか?
- ダイバーシティ&インクルージョン活動として位置づけして後押し
提供:株式会社マネジメントベース
講師紹介
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株式会社マネジメントベース 代表取締役
本田 宏文氏慶應義塾大学修士課程修了後、(株)野村総合研究所にて15年間、人材と組織に関する診断・コンサルティングに従事。その後、人材と組織のアセスメント・コンサルティングを専門とする(株)マネジメントベースを設立。