6月4日 (水) 10:40 - 11:40(提供:株式会社スマートワークス)
今、求められる強い管理職をどう育てるか
グローバルのトップ・リーダーからわかったこと
激しく変化するビジネスを確実にマネジメントし、リードできる管理職には、どのような能力が必要でしょうか。部下を動機づけ、大きな目標に向けて団結させる力でしょうか。意思決定する力でしょうか。分析力でしょうか。あるいは、それ以外の何かでしょうか。 実は、全ての個人や組織にあてはまる一つの答えはありません。しかし、グローバルに活躍するリーダーのデータを見てみると、注目すべき16の能力が浮かび上がってきました。また、それらの能力の中から自分に適した能力をいくつか見つけて強化するのが、効果的であることも、はっきりとわかっています。では自分が伸ばすべき能力を科学的に見きわめ、効果的に伸ばす方法とは、どのようなものなのでしょうか。ご紹介してまいりたいと思います。
- リーダーシップ界の世界的権威、ジャック・ゼンガーの理論とは
- 本多:まず、私たちの会社と、今日、お話する内容についてご紹介したいと思います。スマートワークスは、2001 年の創業以来、いくつかのこだわりを持って人材開発や人材・組織開発コンサルティングを手がけています。 実証データや科学理論に基づく効果性が認められている人材育成プログラムをご紹介したいということは、私たちのこだわりのひとつです。また、時代を先取りする先見性があり、斬新さや意外に見落とされやすい重要な着眼点があるものを日本にご紹介したいと考えており、特徴的なトレーニングコンテンツを持っている、いくつかの海外提携企業とともに事業を展開してきています。 リーダーシップ開発の分野で世界的に知られるゼンガー・フォークマン社は、私たちの海外提携企業のひとつです。この企業は、世界で実績を出し続けているビジネスリーダーを追跡調査し、この人たちに共通する顕著な特徴を見出しました。ゼンガー・フォークマン社が導き出した理論に沿って、強い管理職を育てていくためのリーダーシップ開発法をご紹介しようというのが、本日の主旨です。 管理職にはマネジメントの側面とリーダーシップの側面があります。マネジメントが扱うのはいかにミスを減らし、効率を高めるかというテーマです。それに対してリーダーシップは、現在よりも一段高いレベルのパフォーマンスをいかに実現するか、いかにリソースのポテンシャルを最大活用するかというテーマです。実は欧米の有名ビジネススクールの学科も、その大半は財務や戦略理論などのマネジメントで、リーダーシップを教える大学院は数少ないのです。かりに教えているとしても、抽象的な理論であることが多く、現場にいる人々が日々実践できるような具体性を伴っていません。 ゼンガー・フォークマン社の創業者のひとり、ジャック・ゼンガーは世界的に名を知られるリーダーシップ界の権威ですが、経営の思想家であるだけでなく、ビジネススクールで教鞭をとった経験を持ち、かつ、自ら創業した研修会社を全米トップ5に並ぶ大きなビジネスに育て上げた実業家としての顔も持っています。 それでは、彼が言っているリーダーシップ開発の要点を、弊社の千田から紹介させていただきます。
- 高い業績を出し続けるリーダーには世界共通の特徴がある
- 千田:日本の管理職を強い管理職に育てるためにはどのようにすればよいのか。この課題に立ち向かうとき、ジャック・ゼンガーが言っていることは非常に参考になると思います。 彼は50年以上リーダーシップ開発のトレーニングに携わってきた人物ですが、あるとき、自分がやってきたことは受講者とクライアント企業に本当に役立っているのか検証したいと考え、それまでにデータを蓄積していた世界で約2万人の受講者と業績との相関を調べました。そして、業績がトップ10 %に入る人とボトム10%に入る人との比較を行ったり、さらにはトップ10%に入る人に特有なコンピテンシーを調べ上げて、何百というコンピテンシーの中から絞り込み、明らかにしたりしました。 この調査研究の結果わかったのは、いままでのリーダーシップ開発を覆す、実に驚くべきことだったのです。その知見を含めて、今日は、強い管理職のリーダーシップ開発において押さえるべき10のポイント、法則といったものをご紹介します。 1番目のポイントは、リーダーシップの発揮度合いは業績に直結するということです。リーダーシップの発揮度の高いトップ10%の人と、発揮度の低いボトム20%の人では、売上に9倍の差がついているという調査データがあります。リーダーシップの発揮度合いが高い人は高い業績を出し、逆に低いとおそまつな業績になってしまうのです。ゼンガー・フォークマン社は世界中で研修を実施しており、この傾向は北米のみならず、カナダ、南米、ヨーロッパ、アジア、アフリカと、どこでも同じです。 次に、リーダーというものは生まれつきではなく、育てることができるということが2番目のポイントです。「リーダーシップは天性のものでしょう」と言われることがよくありますが、研究データは、リーダーシップ能力の3分の1ほどは遺伝的、先天的なものに影響されるものの、3分の2ほどは後天的に獲得されたものだと示唆しています。遺伝の影響は考えられているより小さく、学習で伸ばすことが十分に可能なのです。
- リーダーシップのコンピテンシーを平均的に伸ばしても役に立たない
- 3番目のポイントはリーダーの強みに関するもので、非常に重要です。世界のどんな組織にいても、上位20%ぐらいに入る業績を上げている人たちには同じ特徴が見られました。 一般的に、管理職の人たちが自分のリーダーシップ力を開発しようとするとき、自分の強みには「これでいい」と満足し、弱みにだけ「何とかしなければ」と克服に取り組みます。自分の強みをさらに伸ばそうという発想は持たないことがほとんどです。 ところが、リーダーシップのコンピテンシーと業績の相関を見ると、結果は正反対でした。高い業績を出しているリーダーは飛び抜けた強みを持っており、いくつかの弱みがあっても業績には関係ありませんでした。リーダーシップのコンピテンシーに飛びぬけたものが1つもない人は、下位3分の1のゾーンのポジションに入りますが、飛び抜けたコンピテンシーがたった1つあるだけで、いきなり上位3分の1に入ります。3つか5つぐらいになるとトッ・リーダーに入ってきます。 多くの人が、自分の欠点をなくし、平均的にリーダーシップのコンピテンシーを伸ばそうとしますが、それは全く役に立ちません。パフォーマンスを上げるという目的においては無駄です。重要なのは、きわだった強みがあるかどうかです。 そして、管理職がリーダーシップを開発するときにはフィードバックが絶対に必要です。これが4番目のポイントです。 自己評価による良し悪しと他者評価による良し悪しが、それぞれ総合評価とどれくらい相関しているか360度調査で測定したところ、自己評価は他者評価の半分ほどの精度しか得られないという結果になりました。フィードバックは自分の状態を確認する鏡のようなものです。鏡を見ないと、髪が乱れていても、ネクタイが少し曲がっていても、自分ではなかなか気づけないのです。 このフィードバックのために360度のデータを集めるには評価の基準や尺度の設定が重要です。ゼンガー・フォークマン社ではトップ・リーダーに特有のコンピテンシーを16個見つけており、それぞれに3項目ずつ、合計54の質問項目を用意しています。その結果についてフィードバックを受ければ、リーダーが自分のさらに伸ばすべき強みを絞り込むとき、非常に役に立つのです。
- 強みを伸ばすには、そのこと自体より周辺へのアプローチが有効
- 部下のリーダーシップ開発に上司を巻き込む仕組みをつくる
提供:株式会社スマートワークス
講師紹介
-
株式会社スマートワークス 代表取締役
千田 彰氏株式会社リクルートの関連会社にて取締役在任中、米国で開発されたトレーニング・プログラム「7つの習慣」セミナーを1992年日本で始め、統括責任者として事業を推進し、自ら営業とマーケティングを指揮した。 1995年リクルート社に戻ってからは本格的な全国展開を開始して、延べ20万人が受講すると言うベストセラーのトレーニングに育て上げた。退職後、外資系コンサルティング会社取締役副社長としてトレーニング事業を担当後、2001年株式会社スマートワークスを設立して代表取締役となる。
-
株式会社スマートワークス 専務取締役
本多 佳苗氏製薬会社研究所勤務を経て、外資系人材開発コンサルティング会社に勤務。「7つの習慣」「リーダーの4つの役割」「ヘルピング・クライアンツ・サクシード」をはじめとするグローバルなトレーニング・プログラムやアセスメントのローカライズ、および講師育成部門の責任者を務める。 その後、独立して株式会社スマートワークスを設立。専務取締役となる。