6月6日 (金) 10:40 - 11:40(提供:キャリアアセットマネジ株式会社)
「採用学」2:採用のPDCAを回す5つのポイント
採用の課題を洗い出す分析と改善手法の概要と解説
HRサミットの講演では、(1)採用学が目指すもの、(2)実際の産学連携の事例、(3)アセスメントツールの活用方法のご案内、という3点をお話いたします。採用活動に携わる方々に、データに基づいて効果的・効率的な採用活動を行っていくきっかけを提供できれば幸いです。
- 【服部氏】エビデンスを武器に、どうすれば歩留まりが高まるかを「科学」する
- 周知の通り、2016年卒採用から、政府の要請に経団連が応じる形で採用時期が後ろ倒しされ、企業が求職者とかかわれる期間が現在の10カ月から7カ月に短縮されます。このため、いかにして、これまで以上に短い期間で母集団を集め、逃げられないように維持し、求職者を見極め、内定を出し、受諾させ、求人数を確保していくかが重要になります。どうすれば欲しい学生を引き付け、逃げられることを回避できるか。歩留まりということが大切な問題になっていきます。 そこで、今日は、この歩留まりにフォーカスして採用のPDCAをどう回すかという話をしたいと思います。 採用学プロジェクトは、私たち大学の人間と、HRプロや、後でご登壇いただくソシアルワードシェアリングなどのさまざまな企業、そして、採用担当者の方々といった異なる立場の方々が一緒になり、いま、企業の抱える採用の課題を産学連携で解決していこうという活動体です。 すでにさまざまなテーマの研究コンソーシアムが動き出していますが、その中でも、今日、ご紹介するのは、ソシアルワードシェアリングと共同で進めている「歩留まりの科学」研究コンソーシアムの取り組みについてです。内定受諾数を内定者数で割った「歩留まり」を高めるために、何をすればよいのか、何が求職者の内定受諾、もしくはドロップアウトを規定するのか。こういうことをきちんと科学的に解明し、解決策を導き出すことが目的です。 そのためにどのような手法を用いるか。エビデンスとその背景にあるロジックを重視していくというのが、採用学プロジェクトのアイデンティティです。 このエビデンスには2つあり、1つは、主に欧米において既存の経営学で得られてきた良質な知見です。そして、もう1つは、現在の日本における自国・自社のデータ分析から得られる良質な知見です。 この2つのエビデンスを武器とし、企業の新しい採用の形を探っていくことを目指すのが、私たち採用学プロジェクトです。
- 【服部氏】「採用プロセスの良し悪し」は内定受け入れ意思決定の大きな要素
- では、欧米の研究の中で出てきている良質なエビデンスをいくつかご紹介します。
■エビデンス(1):
求職者は、選抜プロセスの途中までは、企業との「主観的なフィットネス」により、その企業での就職活動の継続を判断する。内定受け入れの判断をする段階では、「仕事」、「組織」、「採用プロセスの良し悪し」など、多様な要素を結合した理性的な判断を行う。 主観的フィットネスとは、言い替えればフィーリングによる判断です。選考段階では「この企業はなんかいいな、リクルーターがいい感じだな」といったイメージ、印象が大きく影響するということです。 しかし、内定の受け入れ意思決定の段階では、それが変わり、仕事内容や、組織の理念、職場の雰囲気など、非常に具体的になります。最も重要なポイントは、この段階で採用プロセス自体を振り返る作業が行われることです。「あの試験の意味は何なのか」など、優秀な学生ほど論理的な意味を推測しようとします。 ほかにも、重要なエビデンスには次のようなものがあります。■エビデンス(2):
優秀な学生ほど、採用プロセス中のネガティブ情報(選考フローの不備など)に敏感に反応し、企業側のミス・不手際を感じるとドロップアウトする確率が高い。■エビデンス(3):
選抜ツールが何を意図したものなのか(論理性を問うている、協調性を試している等)が明示されると、候補者は選抜プロセスについて、より肯定的な態度を示す。■エビデンス(4):
採用側の不誠実な態度、信頼を損なうような態度は、候補者の選抜プロセス、および企業イメージにきわめて大きなマイナスの影響。とりわけ「あて馬」であると感じることの影響が大きい。■エビデンス(5):
候補者は、採用プロセスにおいて、一方通行ではなく、双方向のやりとりがなされていると知覚するほど、好意的な感情を持つ。 このようなエビデンスを、企業の採用活動にどう活かせるでしょうか。その実践例を、続いて、ソシアルワードシェアリングの作馬さんにお話いただきたいと思います。 - 【作馬氏】エビデンスとロジックを用いて採用課題に取り組んだ企業事例
- 私たち、ソシアルワードシェアリングは、イベントの企画・運営、Web、SNSなど、企業の採用支援、学生の就活支援をさせていただいている企業です。採用活動ではエビデンスとロジック、PDCAが大事であるという服部さんの話をお聞きする機会があり、特に日本の採用活動を変えたいという思いに共感しました。私たち、採用支援企業もそのあたりを真剣に考えていかないといけないと考え、昨年から採用学プロジェクトに参画しています。 今回は、エビデンスとロジックを用いて実際に採用課題の解決策をどう導き出したのか、私たちがお手伝いさせていただいている企業の事例をお話します。 この企業の採用担当者は課題を3つお持ちでした。1つ目は「母集団の質」。なかなか欲しいと思える学生が来ないということです。2つ目は「歩留まりと引き付け」です。大手企業に負け、欲しい学生に逃げられてしまっていました。3つ目は「選考基準」で、「なぜこんな学生を採用したのか」と現場から言われることもあるとお悩みでした。 課題に対する先行研究のエビデンスには、次のようなものがありました。「母集団の質」については、意欲のある学生は挑戦的な情報でも来る、チャレンジングな学生はチャレンジングな内容の募集に引き付けられるというエビデンスです。次に、「歩留まりと引き付け」については、「社風」、「社員」、「職場の雰囲気」に関するより具体的な情報、企業の情報がイメージできると引き付けられるというエビデンスです。「選考基準」については、選考段階における「ワークサンプル」の有意性というエビデンスがありました。 そして、課題とエビデンスから仮説を立て、施策に落とし込みました。「母集団の質」については、挑戦意欲のある人を集める打ち出しを行い、チャレンジ感をあおる。「歩留まりと引き付け」については、説明会や面接だけでは伝えられないリアルな職場を伝えるため、朝礼から参加し、営業同行する中で組織と社員を見てもらう。「選考基準」については、営業同行の中で学生が取った行動を現場でチェックし、見極める。これらの施策を実行したわけです。
レポートはまだ続きます。気になる内容の続きはダウンロードしてお楽しみください。
- ハードルの高い選考方法で、内定承諾率が4割程度から7割弱に向上
- 企業が参画して活動していく「歩留まりの科学」研究コンソーシアム
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提供:キャリアアセットマネジ株式会社
講師紹介
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横浜国立大学経営学部准教授。博士(経営学)
服部泰宏氏2010年第26回組織学会高宮賞を受賞。組織と個人のかかわり合いに関する研究を進める。近年は採用活動を科学的に検討する「採用学」プロジェクトを主宰。2014年6月『(仮)採用学』(GB出版)から刊行予定。
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株式会社ソシアルワードシェアリング 代表取締役
作馬誠大氏