1980年代半ば以降に生まれた若い世代の特徴を表す言葉として、インターネットの掲示板「2ちゃんねる」で生まれ、世の中に広まったのが「さとり世代」です。
主に2002~2010年度の学習指導要領に基づく「ゆとり教育」を受けた世代にあたり、一通りのモノが揃っていた時代に生まれたものの、物心がついたころからバブル崩壊後の不景気しか知らないためか、車やブランド品などに興味がなく、何事に対してもほどほどで満足する傾向があるといわれます。
浪費や高望みをせず、恋愛に淡泊な「草食系」で、海外旅行には関心があまりなく、気の合わない人とはつきあわないといったことなどが、よく挙げられるさとり世代の特徴。パソコンや携帯電話などが子供のころから身近にあり、欲しい情報はインターネットですぐ手に入る環境で過ごしてきた世代でもあるため、早くから現実を知り、合理的で、将来に対して過度な期待や夢を持たず、「どうせこの程度だろう」とさとり切ったような価値観を持つようになったとも考えられています。
「さとり世代」は2013年の流行語大賞の候補ワードにも選ばれ、現在では人事の世界でもよく使われている言葉です。特に、近年、多くの人事担当者が直面しているといわれるのが、新入社員として企業に入ってきたさとり世代をどのように教育すべきかという課題。クールで醒めており、本音では「将来の目標は特にない」人も少なくないといわれる世代だけに、新入社員研修や配属先の職場で、「最近の新人は学ぼう、成長しようという意欲や熱気があまり感じられない、あきらめるのも早い」といった困惑の声が上がることもあるようです。
もちろん、さとり世代という言葉でひとくくりにするのは適切ではありませんが、この世代の中で一定数いると考えられる人たちの考え方や育った環境を理解することで、「では、どのように育てれば自社の戦力になるのか」という道筋が見えてきます。例えば、ほどほどを良しと考える傾向があるなら、全力を尽くして課題に取り組み、やり切った達成感を感じさせることで、本人の内側からやる気を引き出していく。また、その課題に取り組む合理的な意味を事前によく話して理解させる。そうしたアプローチも有効な策の一つになるかもしれません。