「PMI」とは、Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、期待したM&Aによる統合効果を確実にするための、統合プロセスとマネジメントをさします。
統合後の新体制のもとで、当初計画したシナジー効果を実現するために、長期的な成長をささえるマネジメントの仕組みを構築するプロセスが重要となってきます。
統合する領域としては、経営戦略(ビジョン、戦略、ビジネスモデル、マーケティング等)、管理体制(組織、業務管理、人事制度等)、運用体制(業務、システム、従業員意識等)となり、統合における効果を、確実にそして、最大限に発揮させるため、早い段階で、阻害要因の検証、リスク回避などを行うことが重要であり、それらを解消させ、反映させたマネジメントが必要となります。
近年、日本でもM&Aによる企業統合が増えており、その合意のプロセスにより、当初は、投資家や株主からも高評価を得られますが、デロイト トーマツ コンサルティング株式会社が行った実態調査によると、経営統合による当初の戦略目標を80%以上達成できたと回答した「M&A成功企業」は、全体の3割弱となっています。
経営統合を行った7割が、当初予想されていた統合によるシナジー効果を満足に得られていないという調査結果も出ており、シナジーを具現化し、長期的な成長を支えるマネジメントの仕組みを構築するプロセスであるPMIが注目されています。
M&Aの失敗要因のほとんどが、プロセスが不十分なことによる社内事情の障壁の悪化で、優秀な社員の離職や、対立による業務の乱れにより顧客離れがおこり、かえって企業価値を損なってしまっていることが挙げられます。
PMIでは、経営のトップが、戦略やビジョンを明確に打ち出し、その効果を定量的に測定する必要があります。経営理念を共有し、財務面での無駄を省き、統一的な経営システムを構築していき、さらに、企業文化や風土の融和を果たし、社員一人一人の能力を引き出し、モチベーションをあげることで、シナジー効果の実現へと繋がっていきます。
別々の歴史を歩んできた企業同士が一つになるわけですから、その文化の融和は、効果的なPMIを行うにあたっての最重要課題となります。これには非常に時間を要しますが、なぜ一つのグループになったのか、その意義を振り返ることにより、社員の離職やモチベーション低下を防ぎ、いかに長期的視点で意欲向上を継続させることができるかが鍵となっています。
経営のトップが、戦略やビジョンの具体的なプロセスを描き、それぞれの部署などに伝えることで、ビジョンが共有でき、「どうあるべきか」を一人一人が具現化することによって、シナジー効果や文化の融和などが、スムーズに行われ、経営統合の成功につながるということになります。
M&Aの成功は、PMIをどう構築していくかが鍵となるといっても過言ではないでしょう。