「サクセッションプランニング(Succession planning)」とは、特定のポジションに対する後継者育成計画のことです。
一般的な研修による人材育成と異なり、後継者としての潜在能力を持つ候補者に対し、必要となる業務経験、知識、トレーニングを積ませて長期的な計画のもとで育成することを指します。よって、人事部よりも経営層の関与が高く、企業が発展し存続し続けるための最重要課題の一つと言えるでしょう。
サクセッションプランニングを効果的に導入するための一般的な手順としては、(1)企業のミッション、ビジョン、および経営戦略の明確化、(2)経営戦略実行に必要となる最重要ポジションの確認、(3)上記ポジションに求められる人材のスペックをリストアップする(必要となる知識やスキル、望ましい性格や振舞い方、人間力、等)、(4)上記要件を満たす人材の選出、(5)選出した人材を2で確認したポジションへ登用するための育成プランの作成、(6)上記ステップの継続的な見直し及び実施、が挙げられます。サクセッションプランニングはあくまで「人」ありきな戦略です。よって、候補者によってケースバイケースに柔軟に対応することが何よりも重要です。
典型的な事例を3つ挙げましょう:(1)「早期段階からの実施」では、入社後5年程度の能力ある人材を選別し、社内外での重要名会議やイベントに同席させることで経営者意識を共有します。(2)「通常業務の中での実施」では、日常的に経営に関与させることで経営者マインドを成長させます。(3)「OJT(On the job training)」では、実際に経営者の傍でトレーニングを受けることで、経営者として必要となるコミュニケーション力やマインドを育てます。
実例では、2001年のゼネラル・エレクトリック(GE)社において、当時のCEOジャック・ウェルチ氏がジェフリー・イメルト氏に座を引き継ぐ際にサクセッションプランを用いりました。自らリーダーシップ開発研修に関わることで、後継者を育てることが経営者の大切な仕事の一つだということを世間に知らしめたことで、一気にアメリカの有力企業での普及が進みました。
昨今の日本でも、企業の規模に限らずサクセッションプランニングの必要性が認識されています。サクセッションプランニングは企業が発展し続けるためのいわば「未来への投資」です。後継者候補はサクセッションプランニングを通じて高いマネジメント力を身につけると同時に、長期に渡る企業DNAの共有体験から企業のミッション・ビジョン・経営戦略に対する理解力や、企業に対する帰属意識も強化されるでしょう。また、サクセッションプランニングは「客観的」かつ「透明性のある」人事選択であるため、不要な争いを起こすことなく公平な人事異動を可能にするでしょう。