「現行の適性検査ではストレス耐性、メンタルヘルス診断ができない」「適性診断ではストレス・メンタル診断の精度が課題」(企業の人事担当者アンケート回答コメントより抜粋)と考える企業が増えている。
企業が頭を悩ますメンタルヘルス対策

現在使用中と今後導入したい適性検査の合計

 HR総合調査研究所が2013年に実施したアンケート調査によると、現在適性検査として「ストレス・メンタルヘルス診断」を行っている企業は32%に過ぎないが、今後導入したい適性検査を聞いたところ、63%とダントツの1位となった(2位は行動特性診断の24%)。すでに実施している企業と今後導入したい企業を合わせると95%となり、ほとんどの企業が入口でメンタルで問題がおこりそうな人をふるい落としたいと考えていることが分かる。

 様々な統計を見ると、職場でのうつ病患者は増加の一途をたどっているようだ。例えば2010年の調査になるが、日本生産性本部のアンケート調査によると、うつ病など心の病を抱える従業員が、最近3年間で減少傾向にある企業の割合は6.4%にとどまり、44.6%の企業で増加傾向にあるとのこと。

 また、最近よく話題に出る「新型うつ」。仕事をするとうつ症状が出るが、休むとすぐ改善し、趣味やレジャーでは元気に活動できるというもので、回りから見ると単にさぼっているようにも見えるが、もちろんわざとうつを演じている人が多い訳ではないだろう。
 
 このようなうつ病患者が増える背景として、経済の停滞、産業構造の急速な変化、職場での様々なストレスの増大、急速なIT化が引き起こすコミュニケーション不全、若者のメンタル弱体化などが言われるが、一方で、精神科医の安易な診断、投薬で患者数が増えていることを指摘する人も少なくない。かつてほど、うつ病などメンタル不全であることを隠さなければならないという雰囲気が減ってきていることもあるだろう。

 こうした状況の中、職場でのメンタル対策の必要性がいやがうえにも高まっているが、人事担当者は大いに困っているようだ。メンタルヘルスでの課題を聞いたところ、「専門スタッフがいない」(43%)、「社員の関心が低い」(33%)、「経営層の関心が無い」(25%)、「予算が無い」(24%)などが上位に上がった。いくつかコメントを紹介する。

・経営層にメンタルヘルスに対する関心が全くない。問題とも考えていない。(輸送機器・自動車、501名~1000名)
・現場のメンタル疾患への知識不足。根性論。上下関係の希薄(フードサービス、501名~1000名)
・やたら打たれ弱い社員が多い(情報サービス・インターネット関連、101名~300名)
・事前対応がうてておらず、事後対応ばかりになっている。メンタル社員が直接専門家に相談できる仕組みがない。営業所は本社以上に対応ができていない。(繊維・アパレル・服飾、1001名~5000名)
・社員教育にて知識はあるが職場で生かされていない、活かし方が解らない、という状況があるのでより具体的に対応を指導していかなければならないが、現場が忙しくその時間が取れない。(その他サービス、101名~300名)

 政府は企業のメンタルヘルス対策を強化させようとしている。人事担当者としては課題が多い中、まずは経営者、社員の理解をいかに得るかが重要となるだろう。もちろん簡単なことではないが・・・。


HRプロ代表/HR総研所長 寺澤康介

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