臨床心理士として、働く人のカウンセリングをしていて感じることは、多くの人が仕事でのストレスを抱えながら働いているということである。もちろん筆者自身も仕事でのストレスを抱えているし、そんなの当たり前と思われるかもしれない。しかしながら、ストレスとうまく付き合えている人とそうでない人には、“ストレスに対する考え方”が違うように感じる。ストレスとうまく付き合えている人とそうでない人の差とは、いったいどこにあるのだろうか。結論から先に言ってしまうと、それはずばり、「ストレスに対する印象の差」である。
ストレスに強くなる方法

ストレスとうまく付き合えていない人の多くは、「ストレス=悪いもの」と感じている。そのため、ストレスは完璧になくさなければならないと固く考えてしまう。しかしそれを実行することは不可能であり、下手をすれば袋小路に入ってしまうだろう。

一方、ストレスとうまく付き合っている人は、「ストレス=ある程度は仕方のないもの」と柔軟に考える傾向がある。それどころか、適度なストレスはパフォーマンスを上げると考え、あえて自身をストレスにさらすようにしている人さえいる。

仕事でもプライベートでも、ストレスは日常のどの場面にも存在する。そのストレスとどうやってうまく付き合っていくのかどうか、自分なりに考えることは、このストレス社会で生き抜く上で重要なことである。

では、ストレスに強くなる方法はあるのか。「ストレスに強くなる」という言い方が多義的で、はっきりとこれだと示すことが難しいが、臨床心理士が紹介する方法として、「ストレス免疫訓練」というものがある。

ストレス免疫訓練とは、『有斐閣 心理学辞典』によると次のように記載されている。

広義には、ストレスに対する適切な対処(コーピング)行動を身につけるとともに、ストレスに関連する諸問題を予防するための行動を学習し、健康な生活習慣を獲得することをねらった指導プログラムをさす。
自律訓練法や筋弛緩法、呼吸法等を用いたリラクセーション・トレーニング(弛緩訓練)による心身の機能調整、ストレス刺激の脅威性や対処可能性の評価の修正、個人に応じた対処行動の積極的獲得、新しい問題解決法や社会的スキルの習得、刺激統制(スティミュラス・コントロール)と環境調整といった多面的な指導によって、いわばストレスへの「免疫力」を高めようとする指導法である。

一方、狭義には、マイケンバウム(Meichenbaum, D.1985)によって提唱されたストレスに関連する諸問題の解決のための治療パッケージをさす。ストレス・モデルの教授 = 学習に始まり(教育の段階)、リラクセーション法や社会的スキルの獲得といった行動的対処、および否定的な自己陳述の修正といった認知的対処の方策を治療セッションのなかで獲得し(リハーサルの段階)、それらを実生活のなかで実践することができるための援助を行う(適用訓練の段階)という多段階のプログラムが構成されている。

内容は少々難しいが、実際にどのようにストレス免疫訓練を実施しているのか、簡単に解説しよう。

・第1段階 ストレス概念把握
ストレスに関する状況、問題点を明確にし、概念化を行う。特に、「こころ」、「からだ」、「かんがえ」の関係を理解することが大切である。

・第2段階 技能の獲得とリハーサル
リラクセーション法などの現実的問題解決法を学ぶ。

・第3段階 適応とフォロースルー
第2段階で身につけたさまざまな技法を、現実場面で試したり、今後に向けてのシュミレーションを行ったりする。

このような3段階を経て、日常生活で適応するというプロセスを経る。

最近では、日本でもストレス免疫訓練を行っているクリニックやカウンセリングルームが増えてきている。ストレスに悩んだときは、一度この手法を思い出して欲しい。


koCoro健康経営株式会社 代表取締役
Office CPSR 臨床心理士・社会保険労務士事務所 代 表
一般社団法人 ウエルフルジャパン 理 事
産業能率大学兼任講師
植田 健太

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