人材を引きつける社風は「自由」「風通しの良さ」

新卒学生を含めた人材が、具体的にどのような社風を好ましく思っているかについては、転職情報サイト「日経キャリアNET」が2016年に実施した「社風・人間関係と転職に関するアンケート調査」の結果が参考になる。

同調査では、10種類の典型的な社風をリストアップし、それぞれについて個人的に好ましいと思うか・好ましくないと思うかを尋ねている。その結果、8割以上の回答者が「好ましいと思う」と回答した項目は以下の4つとなった。

・社内の風通しが良く、隠しごとが少ない
・個人の自由度が高く、余裕を持って仕事ができる
・社内会議などの開始・終了時間を厳守する
・年齢や上下関係に関係なく自由に意見を言う

さらに、現在の職場または直近に在籍していた職場の社風について尋ねた質問で、「社風があっている」と回答した人のコメントも、同様の傾向を示しており、「仕事の自由度が大きい」、「自由に意見が言える」、「風通しが良い」といった内容が目立つ。つまり、この3点の特徴を有する社風こそが、優秀な人材を惹きつける社風と言えるだろう。

一方、好ましくない社風については、「いわゆる体育会系で上下関係に厳しく、勝負(目標達成)にこだわる」と回答した割合が6割を超えている。

また、20代は他の年齢層に比べ、「安定志向で堅実さを求める」ことを好ましくないと回答している割合が多く、「個人の成果を重視して昇進や報酬を決める」ことを好ましくないと回答している割合が少ない点も特徴的だ。若い人材ほど、新しいことにチャレンジして成果を上げ、そのことを制度的に評価してもらいたいと考える傾向にあるようだ。

若者にあわせようと社風を無理に改編しようとしないまでも、長期的に人材を確保するためには、彼らの好む傾向を知り、対策することも必要だろう。

採用応募のきっかけとして重要度を増すインターンシップ

社風の情報を、どのように就活中の学生へ提供するかについては、再び、「2019年卒学生就職活動意識調査」レポートを見ることでヒントが得られるだろう。同調査によると、内々定を獲得した企業への応募のきっかけとして、特に多かった回答は、以下の3つとなっている。

・就職サイトで知って:31.0%
・就職サイトが主催するイベントで話を聞いて:28.7%
・インターンシップに参加して:25.7%

就職サイトやイベント(企業合同セミナー)だけでなく、インターンシップがきっかけとなっているケースも多いことがわかる。インターンシップの内容は企業によって異なるが、実際に職場に入り込んで仕事体験をしたり、人事担当者以外のさまざまな社員と交流したりできる機会のあるものも多い。そうしたインターンシップの場は、学生にとって、特に知りたい企業の社風をよりリアルに肌で感じられる場となっていると考えられる。

なお、HR総研が2018年3月に実施した「2019年新卒採用動向調査」によると、回答企業の52%が、2020年卒採用に向けてのインターンシップを実施する予定だという。

予定しているインターンシップのタイプでは、「1日」(55%)、「半日」(38%)と回答が多くを占めたが、学生がじっくり社風を感じ取るためには、半日~1日ではやや不足しているかもしれない。内容的にも、半日~1日のインターンシップでは、セミナーの延長にとどまる可能性がある。単にインターンシップを開催すればいいというだけでなく、実施期間や内容も含めて、学生が企業の社風を感じられるようなプログラムを検討する必要があるだろう。

「就職活動時に企業の社風を知っておきたい」という新卒学生のニーズに応えることは、優秀な人材を獲得するためだけでなく、入社後の従業員定着度を高めるためにも重要だ。インターンシップは、その効果的な方法のひとつだと言える。企業の人事担当者は、新卒学生が、社風も含めた多くの情報を得て、企業理解を深められるような仕組みづくりを考えていきたいものである。
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