残業施策の成功は告知・コミットメント・実施期間が鍵

中原氏は長時間労働の弊害について、「健康リスクや休職リスクが高まるだけでなく、特に残業時間が月60時間以上の層において、成長に欠かせない内省機会や学習機会を失ってしまう」と指摘。また、残業削減は企業の中長期的な課題である、人手不足解消の対策としても極めて重要であるとした。

では、残業を適切に削減するにはどうすればいいのか。現状について特記すべきは、残業施策に対して一部の従業員が「抜け道」を探そうとする現象が起こっていることだ。残業施策が告知された時、そのことに37.1%が効果に疑問を抱き、23.2%が従わない方法を考えた、ということが調査で明らかになった。

中原氏は、残業施策の効果を最大化するには、以下の3点が鍵となると述べた。

●残業施策の告知の徹底
多様な告知手法(メール、イントラネット、掲示板、説明会、段階的導入など)の併用。

●従業員本人のコミットメント
施策に対する理解、受け止め、行動。

●職場(経営陣・上司・同僚)のコミットメント
他の人も施策をちゃんと実行するのか。

告知とコミットメントの関係においては、告知手法が増加するほど高コミットメントの割合が増える傾向となった。施策開始時に告知するチャネルを多く用いるほど、順に高コミットメントとなり、6チャネル以上になると、告知無しの場合の3.1 倍となる。残業施策を成功させるためには、経営層・人事担当者・上司層があの手この手で告知することが重要と言える。

また中原氏は、残業施策の効果は、短期間で判断すべきでないと強調した。今回の調査で、残業施策の効果実感は開始1ヶ月後に最も低くなるが、その後上昇することが明らかになったことから、「残業は長期に習慣化したものであるため、解除するにはある程度の忍耐が必要。1ヶ月程度では諦めてはいけない」と述べた。

「働き方改革」が少しずつ浸透し始め、長時間労働の是正に取り組む企業は、労働時間制限や人事制度などハード面を中心に残業施策を行っている。しかし、これを抜本的な改革とするためには、残業発生のメカニズムで明らかになったように、労働慣習や企業文化に切り込む、ソフト面の対策を含めた全体設計が求められている。さらに、設計だけでなく職場のコミットメントを高めることも成功の鍵を握っている。
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