しかし、経済産業省 平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業「健康経営評価指標の策定・活用事業」東大WGの成果報告書によると、企業における健康関連コストの中で最も大きな割合を占めているのは、「出勤はしているけれど何らかの健康問題によって生産性が低下しているために生じる損失」、つまりプレゼンティーイズムによる損失こそ最大のコスト要因だという。
以下のグラフを見ると、プレゼンティーイズムによる損失の割合は77.9%。実にアブセンティーイズムによる損失の17倍以上なのである。
また、プレゼンティーズムは周囲に影響を与えるためより深刻な症状であるといえる。ただの風邪気味な状態であっても、無理に出社すれば職場のほかのメンバーにうつしてしまう恐れがあり、また、なんとなくだるく集中できない状態で出社すれば、周りに悪影響を及ぼす。そうなれば、組織全体のパフォーマンスに支障を来しかねない。無理に出社を続けて症状が悪化すれば、入院や長期欠勤といった事態に陥り、さらに医療コストがかさむ恐れもあるだろう。
とはいえ、日本人にとって「勤勉は美徳」であり、多少の風邪気味やだるさなら体調不良を押して出社するという人は決して珍しくなく、欠勤・休職=アブセンティーイズムは日常の職場生活の中でさほど頻繁に起きることではない。その一方で、プレゼンティーイズムは日頃からあたりまえのように発生している。
企業の生産性の向上のためには、アブセンティーイズムだけでなく、プレゼンティーイズムという目に見えにくい損失をいかに抑えるか ―― 企業と社員双方の意識改革が、大きな課題となりそうだ。
そして最も大切なのは、アブセンティーイズムでもプレゼンティーイズムでもない人、すなわち生産性高く頑張っている社員がきちんと評価される制度設計が必要だということだ。
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