文理別、男女別など各上位 100 社の傾向を分析し、その背景を探ってみたい。
会社を選ぶ理由は「安定している」「業界上位」が主流
2018年卒の学生に人気のある企業の傾向を見ると、文系では旅行業関係・金融関係が根強い人気を誇っている。そのほか、エンターテインメント関係の企業や広告代理店・出版関係の企業なども、多くの人気を集めているのが特徴である。一方、理系では、食品関連・製薬・日用品・ゲーム関連の企業など、普段から見慣れていて親しみやすい製品を扱っている企業が人気企業の多数を占めている。だが一方で、建設業や電気系・化学系メーカーなどの企業名も上位にランクインするなど、理系らしい傾向も見られた。
文系・理系双方に共通しているのは、知名度の高い有名・大手企業が名を連ねていることだ。これは、企業ブランドのイメージが既に彼らの頭の中に刷り込まれており、業務内容が想像しやすい、という点が理由の一つとして考えられる。
また、文系・理系問わず、会社を選ぶ理由が「安定している」「業界上位である」「やりたい仕事ができそう」といった点に集中している。航空関係に限れば「国際的な仕事ができる」も上位に上がっており、理系ではメーカーなどを中心に「技術力が高い」を理由に挙げる者も多いが、全体として見ると「安定」と「やりがい」の2つが主流であると言えるだろう。
若者の安定志向がランキングにも影響か
過去30年間の就職人気ランキングの傾向を見ると、以前から有名・大手企業が名を連ねていた。だが、2010年以降は、大規模な企業グループを抱える老舗企業に加えて、鉄道や航空などの交通インフラ関連企業、保険会社・金融機関などのほか、旅行・レジャー業界も人気を集めていることがわかる。企業規模の大きな老舗企業や交通インフラ業界、金融業界は、経営基盤が比較的安定しており、「長く働く」という点において手堅い業界である。一方、旅行・レジャー業界は経営基盤の安定性よりも、自社の施設やサービスを利用してもらうお客様の反応が目に見えてわかりやすく、やりがいや手ごたえを得やすい業界であり、その点が人気を集めているようだ。
これらの業界の面から見ても、昨今の学生が企業に求めるものは「安定・手堅さ」と「やりがい」であると言えるだろう。
安定志向の背景にあるもの
これらの安定志向は、今の学生が好景気に沸いたバブルの時代を知らずに育っていることも影響しているのではないかと推測される。生まれたときから不景気で、なおかつリーマンショックや東日本大震災など日本の経済が大きく打撃を受けるような出来事を子どものうちに経験してきた彼らにとっては、体力や資金力のある大手・有名企業に目が向くのも自然なことかもしれない。それでいて、企業で働くのであれば自分のやりたい仕事、やりがいのある仕事をしたいとも考えている。また、近年「イクメン」「家事メン」などの言葉が流行していることを受けて、将来結婚して子育てをすることも視野に入れて企業を選ぶ傾向も見受けられる。結婚・出産・子育てといったライフイベントと仕事が両立できるような企業に勤めたいと考えれば、おのずと産休・育休や時短勤務制度などが整った大企業に目が向きやすい。実際、大手企業を中心に、産休・育休制度がきちんと整っていること、育休から復帰した先輩社員が企業内で活躍していることを就職活動中の学生にアピールする企業も近年多くなっていると聞く。
「仕事ではやりたくないこともやらなければならないものだ」と教育されてきた中高年の世代にとって、安定もやりたい仕事も求める今の学生は少々わがままに映るかもしれない。しかし、逆を言えば、最近の学生はそれだけ職場環境や自分のやりたい仕事に関して妥協しない姿勢を持っているとも言えるのではないだろうか。