仕事をしているうえで、体調を崩して休職に入る従業員の対応で悩ましいのが有給休暇の取り扱いである。

各社さまざまな取り扱いをしているが、まずは休職とはそもそも何かについて考える必要があると思う。
休職に入る前に有給を使い切るべきか

そもそも休職制度とは?

休職制度とは、何らかの理由で体調を崩した従業員をすぐに解雇するのではなく、一定期間をおいて治癒し、また労働契約を継続させるための制度である。

よくある勘違いなのであるが、実は法律上は必ずしも定めなくてもよい制度でもあるのだ。会社側がある意味福利厚生の一環や、解雇猶予措置として定めているのである。

そのように考えると、休職制度はある意味最後のセーフティーネットとして機能させることをお勧めしている。いたずらに休職期間が長い制度や、1日でも復職すればまた休職できる制度にしているところは、残念ながら休職制度が“悪用”されているケースを散見する。従業員が安心して働ける機能を果たせばよいと考えるが、逆に手厚すぎる制度で休職者のみが優遇されているように感じると、頑張って働いている人が何か頑張り損に感じてしまうというケースもあるので、実態をよく見ないといけないと常々考えている。頑張らない人のための休職制度ではなく、頑張っている人がいざというときに守ってもらえると、安心して働けるための休職制度にすることが肝要なのである。

では、本題の休職に入る上での有給休暇の取り扱いについて考えてみたいと思う。

意外に知られていない「休職期間中に有給は使えない」ということ

最後のセーフティーネットとして考えるのであれば、有給休暇は使い切った後、それでも治癒しない場合は休職に入ると考えるのが原理原則としては良いと思われる。

社内でもそのように統一のルールや内規を定めておくとよりよいであろう。しかしながら、復職後通院などの必要があると考えられる場合、特に身体疾患の場合は、例えば「3日に限り有給休暇を残しておける」など統一のルールを定めるとよいだろう。

よくある勘違いなのであるが、休職期間中は有給を使うことができないのである。休職期間満了日に、余っていた有給休暇を使う、ということはできない(有給休暇はあくまでも役務提供すべき日の労働を免除されるものであるため)。いくら有給休暇が40日残っていようと、休職満了日から復職せずに有給休暇を利用し、40日間在籍期間を延ばすということはできないのである。

そういう意味では、「有給休暇を使い切る=労働契約の終了日を伸ばす」という面もある。つまり、有給休暇を使い切るよう指導するということは、従業員にとっても雇用契約が解約される日を伸ばすことができるというメリットもあるということを忘れてはならない(案外このポイントは見逃されがちである)。

とはいっても、各社さまざまな事情があると思われる。大事なのは統一ルールを定め、誰であっても同じルールで運用するということである。これが会社にとっても従業員にとっても安心して働きやすい職場の第一歩であることを忘れてはならない。

メンタルヘルス対策もそうであるが、職場で一番大切なのは働く人がワクワクと働き、業績も上がるという組織作りである。そのことが企業の業績を上げる最も効率の良い投資である。そのためのある意味セーフティーネットが休職制度であり、今回のような休職に入る際の有給休暇の取り扱いを統一するという工夫なのである。

メンタルヘルス対策は投資なのである。
そのような考えが日本中に広まればよいなと思う。

Office CPSR臨床心理士・社会保険労務士事務所 代表 
一般社団法人ウエルフルジャパン 理事
産業能率大学兼任講師 植田 健太

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