転職市場における女性の存在感の高まり
人手不足が加速していく中、それに応じて人材の流動化も加速している。本記事では、株式会社リクルートによる「女性の転職に関する最新動向のデータ」をもとに、女性の働き方の変化について紹介する。同社が発表したリクルートエージェントのデータによれば、2023年度の女性転職者数は2013年度の5.09倍に達した。この伸び率は2023年度の全体の転職者数3.41倍を大きく上回り、過去10年間で女性の転職が加速していることがわかる。
さらに特筆すべきは、契約社員や派遣社員から正社員への転職者は5.84倍と約6倍になっている点だ。これは、社内での内部登用だけでなく、転職を通じて雇用形態を変更する女性が増えていることを示している。
女性の労働力率が20代後半から30代前半で低下する現象の「M字カーブ」は、もはや解消されつつあると考えられている。昨今では正規雇用比率の低下を示す「L字カーブ」が新たな課題として浮上したが、今回の調査結果からは、このL字カーブも解消されていく可能性があることが示唆された。
賃金アップの実現が顕著に。4割の女性が「1割以上賃金が上昇」
次に、「転職時に賃金が1割以上増加した女性の割合の推移」のデータを確認する。2023年度のデータによると、女性転職者の41.3%が、転職時に賃金が1割以上増加していた。この傾向は、2020年以降、急速な右肩上がりとなっており、転職時に「スキルの評価」や「業務経験」の賃金への反映が適切に行われていることが推察できる。リクルート HRエージェントDivisionカスタマーサービス統括部長の熊本優子氏は、「この傾向は働く時間や場所に制約がある方や正社員のブランク期間がある方が正社員に転職するケースが増えているため」と指摘する。企業側が、個々の事情に合わせて労働条件を柔軟に調整したり、家事・育児経験をビジネススキルとして評価したりする動き出てきているとのことだ。
人手不足が深刻化する中でのこういった変化は単なるトレンドではなく、企業の持続的成長のための戦略的活動だ。多様な経歴を持つ女性人材の活用は、組織の革新性と競争力を高める可能性を秘めている。人事戦略を再構築して、新たな人材プールを効果的に活用することは、今後の企業成長の鍵となるだろう。