株式会社リクルートは、2024年11月13日に「女性の転職」についてまとめた調査結果を発表した。同社の転職支援サービスを活用した人の2013年からの10年間の転職者の推移や2008年以降の転職時の賃金データの動向を分析したもので、これによると、女性の転職市場に近年大きな変化が見られるようだ。また、出産・育児等を理由に一度仕事を離れた女性や、非正規雇用で就業していた女性が正社員で再就職する傾向が強まっていることも明らかとなった。
女性の転職数は10年で5倍以上、正社員復帰は約6倍に。「M字カーブ」と「L字カーブ」 の解消進み、賃金アップの機会も拡大

転職市場における女性の存在感の高まり

人手不足が加速していく中、それに応じて人材の流動化も加速している。本記事では、株式会社リクルートによる「女性の転職に関する最新動向のデータ」をもとに、女性の働き方の変化について紹介する。

同社が発表したリクルートエージェントのデータによれば、2023年度の女性転職者数は2013年度の5.09倍に達した。この伸び率は2023年度の全体の転職者数3.41倍を大きく上回り、過去10年間で女性の転職が加速していることがわかる。

さらに特筆すべきは、契約社員や派遣社員から正社員への転職者は5.84倍と約6倍になっている点だ。これは、社内での内部登用だけでなく、転職を通じて雇用形態を変更する女性が増えていることを示している。

女性の労働力率が20代後半から30代前半で低下する現象の「M字カーブ」は、もはや解消されつつあると考えられている。昨今では正規雇用比率の低下を示す「L字カーブ」が新たな課題として浮上したが、今回の調査結果からは、このL字カーブも解消されていく可能性があることが示唆された。
転職者数の推移

賃金アップの実現が顕著に。4割の女性が「1割以上賃金が上昇」

次に、「転職時に賃金が1割以上増加した女性の割合の推移」のデータを確認する。2023年度のデータによると、女性転職者の41.3%が、転職時に賃金が1割以上増加していた。この傾向は、2020年以降、急速な右肩上がりとなっており、転職時に「スキルの評価」や「業務経験」の賃金への反映が適切に行われていることが推察できる。

リクルート HRエージェントDivisionカスタマーサービス統括部長の熊本優子氏は、「この傾向は働く時間や場所に制約がある方や正社員のブランク期間がある方が正社員に転職するケースが増えているため」と指摘する。企業側が、個々の事情に合わせて労働条件を柔軟に調整したり、家事・育児経験をビジネススキルとして評価したりする動き出てきているとのことだ。
女性の転職者の賃金動向
今回の調査結果は、企業の人材戦略を推進する人事担当者・経営者にとって、人材獲得の方針を再考する上で参考になる。正社員経験にとらわれず、多様な背景を持つ女性人材の潜在能力に注目して人材確保に繋げている企業が増えているのだろう。また、優秀な人材を確保・維持するには、“市場価値に見合った報酬設定”は不可欠である。

人手不足が深刻化する中でのこういった変化は単なるトレンドではなく、企業の持続的成長のための戦略的活動だ。多様な経歴を持つ女性人材の活用は、組織の革新性と競争力を高める可能性を秘めている。人事戦略を再構築して、新たな人材プールを効果的に活用することは、今後の企業成長の鍵となるだろう。

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