50代の転職者は10年で9倍に増加。40代は4倍に
社会の変化に伴って、終身雇用・年功序列といった制度や価値観が揺らぎ、転職などによる人材の流動化が進んでいる。個人が自身のキャリアを自律的に考える必要性は、年代を問わずに認識され始めている状況だ。リクルートによると、同社が運営する転職支援サービスを利用した転職者数は、10年前の2014年と比較して2.74倍に増えたという。年代別に見ると、著しく伸びたのが「50代」の9.12倍で、「40代」も4.48倍といずれも2020年を境に転職者数が大きく増えている。
日本ではミドル世代の約5割が「キャリア形成に向けた取り組みを行っていない」
次に、同社はキャリア形成に向けた個人の取り組み状況を尋ね、そのうち「取り組んでいることがない」と回答した人の割合を国別に比較した。ミドル世代(40歳~59歳)の同値は日本が47.1%、アメリカが8.5%と、その差は大きく38.6ポイント開いた。アメリカでは9割以上のミドルシニアが何らかの将来に向けたキャリア形成に取り組んでいることが明らかとなった。「キャリアプラン」に関する取り組みを行うミドルシニアは1割程度
次に、「将来のキャリアに対して取り組んでいる」とした人の「具体的な取り組み内容」を日米の年代別に比較している。すると、ミドル世代(40歳~59歳)の回答結果で特に差が大きかった項目は、「キャリアプランの明確化と目標設定」(日本12.0%、アメリカ44.2%:32.2ポイント差)、「ネットワークを広げてつながりを築く」(日本14.1%、アメリカ39.9%:25.8ポイント差)となっていた。日本のミドル世代の8割が「キャリア教育受講の経験はない」と回答
最後に、「キャリアデザインに関する教育・研修等の受講経験」を質問した結果を見ると、ここでも日米で大きな差があった。日本のミドル世代(40歳~59歳)の回答結果では、「キャリアデザインに関する教育・研修等を学生時代に受講したことがない」が80%と大半で、アメリカの38.1%とは2倍以上の差があった。また、年代別の違いにも注目すると、日本の若手世代(20歳~39歳)は同値が57.7%となり、ミドル世代とは20ポイント以上の差があった。終身雇用や年功序列といった“日本型雇用慣行”が見直されている中で、働く人自身がキャリアについて考える必要性が高まっているためであろう。
また日米比較では、日本とアメリカでの労働市場による従業員のキャリア観の違いが顕著に見られた。アメリカではビジネス環境の速い変化に対応すべく、労働市場はとても流動的で、従業員の自己管理やキャリア形成が求められてきた。そのため、学生時代~社会人時代を通して「キャリアデザイン」に関して学ぶことが文化として当たり前となっていることが、本調査結果からもうかがえた。
企業にもキャリア形成支援の取り組みが求められるなかで、今までキャリアについて考える機会がなかった人をサポートする施策も必要になるだろう。キャリア形成支援の施策を検討する材料として、本調査結果を参考にしたい。