7割以上が人材確保のための「賃上げ」を実施
2024年の春闘における労使交渉では、大企業の「満額回答」が相次ぎ、労働団体の連動の集計によると、全体の前年からの賃上げ率は5%超の高水準となった。この背景には、物価高が進む経済情勢と政府による働きかけがあるが、同時に労働力不足が進む中で“いかに人材を確保するか”という企業の人材戦略がある。そうした人材戦略について、企業はどのように取り組んでいるのだろうか。まず、「2023年1月以降に人材確保(新規採用・離職防止)に向けて実施した施策」について東京商工リサーチが尋ねた結果、最多となったのは「賃上げをした」で、全体の73.3%となった。同回答は他の施策と比べてダントツの割合で、大企業では84.9%、中小企業では72.2%が回答している。また、次点以降を全体回答結果が多かった順に見ていくと、「休暇日数を増やした」が24.4%(大企業:17.7%、中小企業:25.2%)、「社内レクリエーションを実施した」が10.5%(大企業:12.1%、中小企業:10.3%)となった。一方で「施策は取っていない」は全体の6%(大企業:8%、中小企業:5.7%)と一桁になり、多くの企業が人材確保に向けた施策を行っている実態が分かった。
「退職代行」業者は全体の1割、大企業の2割弱が経験
次に、「2023年1月以降、退職代行サービスを利用した従業員の退職があったかどうか」を同社が尋ねた。すると、全体結果では「正社員・非正規社員であった」が1.9%、「正社員のみであった」が6.3%、「非正規社員のみであった」が0.9%だった。これらを合計した「退職代行を活用した従業員の退職があった」との回答は9.3%と、全体の1割に迫っている。さらに企業規模別に見ると、「退職代行を活用した従業員の退職があった」という企業は、資本金1億円以上の大企業で合計18.4%、資本金1億円未満の中小企業で合計8.3%だった。大企業の方が2倍以上多く、退職代行サービスが世の中に浸透していることもうかがえた。