人的資本情報を「開示」した企業は非上場企業を含めて7割超に
2023年3月期決算より、有価証券報告書を発行する大手企業を対象に「女性管理職比率」、「男性育児休業取得率」、「男女間賃金格差」の3項目の開示が義務化された。企業の人的資本開示への対応や課題はどのような状況なのだろうか。はじめにWorks Human Intelligenceは、「人的資本情報の社外開示対応状況」を尋ねた。すると、人的資本情報を「開示した」企業は、非上場企業を含めて76.5%(義務化に基づき開示:65.9%、義務化対象外(非上場企業等)だが開示:10.6%の計)と、7割を超えることがわかった。
約7割の企業で人的資本開示対応の専任担当者が不在。「人事部のみ」での対応が約7割に
続いて同社が、「人的資本開示対応において、専任担当者はいたか」と尋ねたところ、「いた」が29.2%、「いなかった」が70.8%だった。比率向上施策の実施は「女性管理職比率」と「男性育児休業取得率」が8割超も、「男女間賃金差異」は約4割
続いて同社は、有価証券報告書で開示が義務付けられた3項目について、具体的な施策実施状況を聞いた。すると、施策を「実施している」もしくは「策定中」と回答した企業の実施施策は、「女性管理職比率」が84.4%、「男性育児休業取得率」が87.5%と、ともに8割を超えた。一方、「男女間賃金差異」は40.6%であり、この結果から、3項目における実施状況には差があることが明らかになった。<「女性管理職比率」の場合>
●職種転換を含む女性従業員向けキャリア形成(活発化)支援の育成
●候補者に向けた各種研修の実施
<「男性育児休業取得率」の場合>
●育児休業の有給制度化、金銭的援助
●制度の周知(全社向け、対象者向け、管理職向け)
<「男女の賃金の差異」の場合>
●女性の上位役職者の育成
●女性管理職比率向上による格差是正
これを踏まえて同社は、「『男女間賃金差異』の一因である女性管理職の低比率を解消すべく、まずは『女性管理職比率』の向上に注力するといった回答が複数見受けられ、段階を踏んで自社に合った施策を推進している」との見解を示している。
人的資本開示対応における苦労は「経営方針・戦略との関連性」、「KPI設定・具体的な開示範囲の設定」など
最後に同社は、「人的資本情報開示対応において一番苦労したこと」を自由回答で質問した。その結果、「経営方針・戦略との関連性」、「KPI設定・具体的な開示範囲の設定」、「グループ全体の統制」といった項目があげられ、以下のような具体的内容が寄せられた。<経営方針・戦略との関連性>
●経営理念や経営戦略、中期計画と連動したストーリー性のあるKPIの設定
●開示前は求める人材に具体性がなく、その育成方法も含め詳細に定義されることがなかった
<KPI設定・具体的な開示範囲の設定>
●情報の公開範囲の調整。初年度のため、どのような情報を開示すべきかわからなかった
●公開情報について、どこまで詳細に把握・開示するかにより、必要とするデータが変更となるため、検討自体に時間を要した
<グループ全体の統制>
●グループ全社で数値を出す必要があり、各社条件が市立ではないため、開示項目の調整に苦労した