モンスター社員が創り出される二大要因とは
これは、当事務所でのコンサルテーションで初期によく見られた事例である。現在はそのようなケースは少なくなっているが、多くの会社でもぐらたたきのように、休職者や問題社員が発生しては、疲弊しまた発生するという事例を体験したことのある経営者や人事の方は多いのではないだろうか。どうしてこのようなことが起きるのだろうか? 長年のコンサルテーションの結果、当事務所では2つの要因があると考えている。
要因1:問題が発生しやすい環境であること
職場というのはある意味変化の少ない環境であると言える。心理学の世界でも行動理論という分野では、人は同じ環境であればかなり似たような反応を示すことが実証されている。ワトソンという心理学者に至っては、「健康な1ダースの乳児」と、「育てる事のできる適切な環境」さえ整えば、才能・好み・適正・先祖・民族など遺伝的といわれるものとは関係なしに、医者や芸術家から、どろぼう、乞食まで様々な人間に育て上げることができると唱えたぐらいである(のちに批判されているが、それだけ環境の影響が多いという例である)。
つまりモンスター社員が発生した職場環境というのは、またモンスター社員が発生する可能性が高いと言えるのである。前述した休職・復職のような事例の場合は、就業規則にあわせた制度がきちんと整えられておらず、休職者にとって「ごね得」のような環境があるため、問題が発生しやすいのである。また当事務所では“休職者クラブ”と呼んでいるのであるが、以前休職をしていた人が、非公式的に喫煙所などで休職をいかにうまくするかのノウハウを共有しているケースもある。そのような場合、会社にとって困った人が出続けるのはもちろん、一生懸命に頑張っている人がそのような話を聴くと、頑張るのがばからしくなってしまうという効果もあり、企業に与える負の影響は甚大である。
要因2:不適切な行動ばかり強化して対応している
ここで言う「強化」とは、わかりやすく言えば「ご褒美」のようなものである。
ある会社のケースだが、明らかに問題な社員が存在していた。その社員Bさんは社長に認めてほしくて、仕事を一生懸命頑張っていたが、他の優秀な社員の陰に隠れてしまい、いくら仕事を頑張っても社長の関心を引くことはできなかった。しかしながら、ある日体調不良を原因に会社を休むと社長がこれまでにないぐらい自分に関心を持ってくれたのである。すごく心配して、自宅近くまで訪問してくれ、普段は話す時間などないのに、2時間も話を聴いてくれた。Bさんはとてもうれしく感じて、職場に復帰した後はこれまで以上にバリバリと働くようになったのである。しかしながら社長はバリバリ働くBさんをみて安心したのか、これまで通りそれほど関心をしめさなくなったのである。そうしているうちにBさんはいろいろと問題行動を起こすようになった。そのたび社長はBさんに関心を持ち、業務時間の半分はBさんの問題行動への対応に時間を割く羽目になってしまったのである。
本ケースは、案外ありがちなケースである。Bさんのように、問題社員は常に問題行動を起こしているわけではない。望ましい行動も起こしている。このケースであれば、会社としての対応を「強化」するタイミングは、Bさんが「がんばっている」「バリバリ働く」という「ポジティブな行動」に対して起こすべきだったのである。
会社としては、常にポジティブな行動に対して「強化」を実施するようしてほしい。そのような姿勢がとても大事であると言える。