組織の急拡大に伴う課題は「マネジメントを任せられる人材の不足」が半数以上に
組織の拡大に伴い発生する課題は「○○人の壁」と呼ばれ、組織の拡大や統合を図るには必要な過程でありながら、経営力が試される課題ともいえる。実際に組織が急拡大した企業では、どのような課題が生じたのだろうか。はじめにJAMは、「組織が急拡大した主な背景」を尋ねた。すると、「既存事業が伸び、必要人材が不足したため」が約6割と最も多く、「新規事業や新規拠点の立ち上げにあたり、新しい人員が必要だったため」が約3割で続いたという。
そこで、「組織が急拡大していたタイミングで、どのような課題が増えたか」を尋ねた。その結果、「マネジメントを任せられる人材が不足した」(52%)が最も多く、以下、「スキルや価値観のバラツキが大きくなった」(47%)、「経営の方針や意図が現場に伝わりづらくなった」(39%)と続いた。
また、何らかの課題があったとした回答者に、「選択した課題について、具体的な出来事やエピソード」を自由回答で尋ねた。すると、「離職者が多くなり新人を入社させたが、教える人材が足りなくなったため」や「スキルがある人材はいたが、スキルのない人材に対する教育方針が各々バラバラで、教育後の人材スキルレベルもバラバラになり、組織が円滑に運営できなかった」などの声が聞かれたという。
課題に対し「管理職や社員全体の育成」に取り組む企業が多数
次に同社は、組織が急拡大した際に何らかの課題があったとした回答者を対象に、「急拡大したタイミングで増えた課題に対して、実際に取り組んだこと(打ち手)」を尋ねた。その結果、「管理職や次期管理職の育成」が56.8%、「社員全体の育成」が55.8%と僅差で上位に並び、次いで「採用基準の見直し」が37.9%となった。また、「もし過去に戻れるとしたら、課題に対する打ち手としてどのようなことを優先的に行うか」を尋ねると、「社員全体の育成」と「管理職や次期管理職の育成」が同様に上位を占めたという。もし過去に戻れたとしても、「管理職や次期管理職、社員全体の育成」を優先的に実施したいとする企業が多いことが明らかとなった。
組織の拡大に伴い「管理職が増加」した企業は8割を超える
さらに同社は、「組織の急拡大に伴い、管理職がどの程度増減したか」を尋ねた。その結果、「大幅に増加した」(34%)と、「多少増加した」(47%)の合計は81%だった。組織の急拡大に伴い、管理職が増加した企業は8割にのぼることがわかった。他方で、「変化していない」は13%、「多少減った」は3%となった。
8割以上の若手経営者が「マネジメントの難易度が上がった」と実感
次に同社が、「組織の急拡大に伴い、マネジメントの難易度が上がった実感はあるか」を尋ねたところ、「かなりある」(47%)と「ややある」(39%)の合計は86%におよんだ。あわせて、「マネジメントの難易度が上がった」とした回答者に、「その理由」を尋ねた。すると、「マネジメントできる幹部スタッフへの負担の増大」や「人材の質の低下による時間、労力、売上のロスへの対策」などの声が寄せられたという。
「100人の壁」に苦労する企業は4割超。組織の統括や管理に苦悩か
最後に同社は、「これまで経験した『30人・50人・100人の壁』の中で、最も苦労したのはどれか」を尋ねた。その結果、「100人の壁」が44%、「50人の壁」が30%、「30人の壁」が14%と続いた。「100人の壁」との回答は4割を超え、苦労する企業は多いことがうかがえる。また、「100人の壁の苦労」について具体的な出来事やエピソードを求めたところ、「業務の分業化や多角化が進む反面、関係者が増えるためコミュニケーションコストが大きくなった」や「人材の多様化によって意見に多様性が生まれるというよさがある一方、意思決定が遅くなるというコミュニケーションの問題もあった」、「従来のやり方では新たな人材は育たない難しさをとても感じた」などの声が聞かれたという。人数が増えるにつれて、統括や管理の難化に頭を抱える企業もあると推測できる。