派遣社員も無期雇用社員も「学びへの意欲」に大差なし
少子高齢化により、今後さらなる労働力不足の深刻化が見込まれる中、企業が派遣社員などの外部人材リソースを戦略的に活用する重要性は増している。一方で、派遣社員は企業の人材育成の対象外とされ、リスキリングの議論から取り残されている課題があると聞く。派遣社員として働く人々は、学ぶことに対してどのような意識を持っているのだろうか。まずパーソル総研は、派遣社員と無期雇用社員に対し、「学びへの意欲」を尋ねた。すると、「スキルや学び直しをする必要性がある時代」(派遣:46.2%、無期:46.7%)と「スキルや能力を伸ばしたい」(派遣:34.2%、無期:37.7%)、「仕事で学ぶことは大切と感じる」(派遣:40.8%、無期43.6%)となっていた。これら3項目は、派遣社員と無期雇用社員の間に大きな差は見られなかった。
併せて、「学びへの課題」を質問したところ、派遣社員は「学ぶためのお金の余裕がない」が31.9%となっていた。対して無期雇用社員は18.5%で、その差は13.4ポイントと1割以上開いた。
派遣社員の約8割が学習行動を「していない」と回答。学習時間は無期雇用社員の半分に
続いて、同社が「学習行動」について質問したところ、「特に何も行っていない」が最も多く、派遣社員が78%、無期雇用社員では69.8%だった。約8割の派遣社員が、学習行動をしていないことがわかった。また、「毎月の学習時間」は派遣社員が98.7分だったのに対し、無期雇用社員は204分と、約2倍多かった。
派遣社員は転職や職場変更をまたいだスキルの蓄積がされにくい傾向に
続いて、「前勤務先から活かしている経験」について同社が尋ねた。すると、「元同僚や仕事仲間、上司と連絡を取り合い続けることがある」と「秘術的な知識や、スキルの専門性を活かしている」、「業務経験を活かしている」、「コミュニケーションの仕方を活かしている」の4項目全てで、派遣社員は無期雇用社員の割合を下回った。派遣社員は、業務上で得た経験やスキルを次の職場で活かせていない実態があり、転職や職場変更をまたいだスキルの蓄積がされにくい傾向にあることが明らかとなった。「キャリアへの不安」は派遣社員のほうが全般的に高い
続いて、「キャリア意識」について調べたところ、派遣社員は無期雇用社員と比べ、キャリア不安が全般的に高い傾向にあった。派遣社員では特に、「今のまま、十分な収入が得られるか不安」(45.5%)と「今のまま、いつまで働き続けられるか不安」(45.4%)の割合が高かった。上司・同僚からの手薄な支援
「職場での上司・同僚からの支援」に関する項目では、派遣社員の職場支援が、上司・同僚ともに「業務支援(仕事に関するサポート・フォロー)」に偏っていた。また、「精神支援(プライベートを含む悩み相談)」と「内省支援(振り返りの支援・フィードバック)」も割合が低かった。中でも「ネットワーク支援(社内外の人の紹介)」は、最も手薄であることが明らかとなった。派遣先での「キャリア相談」等の実施率は低く、年代が進むにつれ実施されない傾向に
最後に、「派遣元担当者のフォロー」について同社が尋ねると、特に「キャリア相談」と「学びの助言」の実施率が低かった。また、フォローの実施率を年代別に見ると、20代から50代にかけて実施されなくなっていく傾向にあった。