総合ランキング1位は資生堂。「ジョブ型人事制度」や「女性リーダー研修」を実施
日経BPが発行する「日経WOMAN」は、1988年の創刊時から「企業の女性活用度調査」を不定期で実施しており、今回で21回目を迎えたという。同調査では、「働きがい」と「働きやすさ」という2つの観点から、企業における女性社員活用の実態を「1.管理職登用度」、「2.女性活躍推進度」、「3.ワーク・ライフ・バランス度」、「4.人材多様性度」の4つの指標で測定し採点。それらの合計得点を偏差値化して総合スコアとし、総合ランキングを作成している。2023年版の調査で「女性が活躍する会社」の総合ランキング1位となったのは、「資生堂」だった。以下、2位が「アフラック生命保険」、3位が「高島屋」と続いた。
日経WOMANによると、資生堂は2022年も総合1位であり、2年連続で首位をキープしたという。同社は、2021年から全社に「ジョブ型人事制度」を導入(美容職、生産技術職を除く)した。さらに、若手社員が多様なロールモデルに触れる機会を増やすため「キャリアメンタリング」制度も導入している。さらに資生堂は、女性リーダー研修や、女性役員と女性社員とのメンタリングプログラムなど、リーダー育成機会も充実させているという。その結果、2023年の女性管理職比率は2022年の37.3%から0.3ポイント増の37.6%に向上したとのことだ。
2位となったアフラック生命保険は、2022年の3位から順位を上げた。同社では、女性管理職の道筋を社長自らが率いる「ダイバーシティ推進委員会」でつくっているという。また、2022年度からは女性管理職候補のキャリア形成を役員が直接支援し、早期昇進を目指す「スポンサーシップ制度」を導入している。これにより2022年の女性管理職比率は25.3%だったという。
3位の高島屋は、2022年の6位から大幅に順位を上げている。高島屋における女性の平均勤続年数は26年3ヵ月と、女性平均の23年5ヵ月を上回る水準だという。男女問わず仕事と育児の両立支援を展開するとともに、育児中のキャリア醸成にも注力している。高島屋の女性管理職比率は近年30%前後を維持し、男性育休取得率は100%を達成しているとのことだ。
「女性管理職登用度」が高い企業では、積極的な研修や育成プログラム等を実施
同誌では総合ランキングのほかに、「管理職登用度」をはじめとする4つの部門別ランキングも掲載している。なお、「管理職登用度」部門では、女性役員数や管理職に占める女性の割合を評価ポイントとしている。加えて、社内・社外取締役の人数もチェックポイントとしてランキングしている。本部門のランキングについても、1位となったのは資生堂だった。資生堂は2017年から部門長候補者や管理職候補者などを選抜し、「女性リーダー育成塾」を開講。さらに、2021年には次期役員候補者向けの選抜研修も新設しており、これまでに参加した人のうち、累計で90名が昇格を果たしているという。
2位となったメットライフ生命は、役員・管理職の採用選考や後継者育成計画に公平な数の女性候補を含めるよう社内ガイドラインを制定。また、グローバルで実践的な研修を提供するなどの取り組みも実施しているとのことだ。
3位は高島屋とパソナグループが並ぶ結果となった。高島屋はグループ会社を含め、生え抜きの女性取締役が6人いるという。一方のパソナグループは、2014年に女性幹部候補の育成プログラムを導入し運用を続けている。同プログラムの修了生は全67人とのことだが、そのうちグループ会社の社長に就任したのは2人、執行役員に関しては22人輩出した実績があるとのことだ。
「女性活躍推進度」が高い企業では、育成プログラムやキャリア研修を積極的に導入
「女性活躍推進度」部門のランキングでは、女性活躍の専任組織の有無や、女性社員向けの研修制度などを評価ポイントとしている。本部門では、1位にイオンと大和証券グループが並んだ。イオンは「女性経営者育成プログラム」を2022年に新設。同プログラムは、グループ各社から選抜された20人が、社内外の女性経営者による講話やメンタリングなどを通じ、約10ヵ月間に渡って学ぶ内容となっているという。なお、イオンにおける女性管理職比率は近年30%前後を維持しているとのことだ。
大和証券グループは、4ヵ月間におよぶキャリア研修と社内SNSにより、ネットワーキングやロールモデルとの出会いを促進するキャリア形成をサポートしている。また、職制転向する女性社員が増加し、活躍の場が拡大しているとのことだ。なお、大和証券グループの女性管理職比率は大和証券単体で19.9%、グループ全体では16.9%と、いずれも前年より上回ったという。
「ワーク・ライフ・バランス部門」上位の企業では、男女問わず育休取得率が高い傾向に
「ワーク・ライフ・バランス度」部門では、年間総労働時間や有給休暇取得率、男女社員の育休取得率を評価している。本部門で1位となったのは、日本生命保険だ。日本生命では、2013年から10年連続で男性育休の取得率100%を達成しているという。また、取り組みの強化により産後早期(8週以内)の育休取得が2022年には約30%となり、2019年の約6%から大幅に上回ったとのことだ。
2位には明治安田生命保険がランクイン。明治安田生命では、地方にいながら東京本社の業務が行えるリモートワーク制度を導入。北は北海道から南は鹿児島まで、42人の社員が活用中だという。また3年連続で男性育休取得率100%を達成したとのことだ。
3位は住友生命保険と第一生命ホールディングスが並んだ。住友生命は2022年度入社の総合職から、従業員の希望する勤務地に沿った配属や育成をする、メンバーシップ型にジョブ型の要素を絡めたハイブリットな運用を行っているという。
一方の第一生命は、2022年度から男性育休取得者に最大20日間の有給を付与するなどの長期取得を推進している。なお、2022年の男性育休取得率は100%、平均育休取得日数は22日だったとのことだ。
「人材多様部門上位」の企業では、結婚・出産後も社員の定着率が高く
「人材多様性度」部門では、女性社員比率や勤続年数など定着率を評価。加えて、障がい者雇用率やLGBT理解促進の施策もチェック項目としている。本部門で1位となったのはアフラック生命保険だ。正社員の平均勤続年数にほぼ差が無いことや、女性正社員の56%が既婚者であること、ワーキングマザーが約41%を占めることなどが評価につながったという。
2位には東京海上日動火災保険がランクイン。女性管理職の50%が既婚者であることに加え、ワーキングマザーは36%、新卒入社後3年間の在籍率も90%と高い水準であったという。
3位は資生堂と三井住友銀行が並んだ。資生堂は女性正社員の54%が既婚者で、47%がワーキングマザーだ。また、グループにおける2022年の障がい者雇用率は法定の数値(2.3%)を上回る2.65%だという。
一方の三井住友銀行は、女性正社員の55%が既婚者で、ワーキングマザーの割合は41%だという。さらにLGBTに関わる啓蒙イベントを開催するなど、多様性理解に向けた取り組みも積極的に実施しているとのことだ。