誰にも得意、不得意がある。そのため、それぞれの得意分野では積極的にリーダーシップを発揮していくのである。必要なのは、雁行型リーダーシップを発揮してみようと全員が思える場創り、風土創りだ。この場創り、風土創りは経営者が取組むしかない。全体を俯瞰で見れるのは社長をはじめ、経営者しかいないからである。
社長が発揮するリーダーシップ・行動力を一人一人の社員が発揮するには?

場面によってリーダーが変われる雁行型リーダーシップを少しずつ発揮してみる!

場創りのためであれば、平社員が課長等の管理職、社長にもひと言物申してもOKであろう。案件ベースで考えた場合、管理職ましてや経営層では事細かくわからないことも多いからである。
特にクレーム対応はその発生した原因、経緯、お客様の要望、対処方法の立案について、お客様の声を最前線で聴いている当人しかわからないからである。

ただ、当人がどこまでリアルに正確に状況を回りに説明できるのか?しているのか?は厳しく上司から問う必要がある。管理職や経営者が適正に決断するためである。適正に決断するためには、会社にとって、当人とってマイナスの情報でも報告させる「場」や「ムード」がやはり必要である。組織としてなら、解決できる問題かもしれないという全社共通認識も不可欠であろう。

ただ、注意が必要である。甘やかすような表面的な優しさや自己満足でしかない表面的な厳しさは害でしかない。単純にカッコ悪いのである。パワハラがいい例である。そのようなカッコ悪さでは雁行型リーダーシップは発揮されないであろう。誰も発揮してみようとも思わないだろう。優しさも厳しさも表面的になっていないか?なっていたら、どのように解消するか?そのような時まず必要なのは、解決しようと思える「場」や「ムード」ではないだろうか?
繰返し「場」や「ムード」と申し上げてきたが、それらを下地に取組まないと制度やシステムは機能しないのである。制度やシステムは人が運用するからである。そんなことできっこないとそのままスルーするか?踏みとどまって、しぶとく考え抜くか?どちらを選ぶかは経営者の想いや判断になるだろう。どちらが生き残るかは誰にもわからない。しかし、私個人としては後者が好きである。そして、後者が生き残ると信じて疑わない。そのような会社がたくさんあるからだ。

渡り鳥の知恵を人間の行動に活かしてみる!

前置きが長くなったが、雁行について簡単に説明させていただく。渡り鳥が飛び立つと一定の列をなして次の目的地まで羽ばたいていく。この列を雁行と言う。雁行の先頭に立ち、他の渡り鳥を引っ張っていく鳥がリーダーである。列の先頭に立つということは、目的地を知っており、ビジョンがあるということだ。そして、風の抵抗を受けるため、他の鳥の何倍ものエネルギーを使う。
一つ面白いのが、渡り鳥の生態研究者によって、この引っ張っていく鳥が交代していくことが明らかになってきているそうである。

リーダーは飛行することによって気流を生じさせ、後方の鳥達の負担を軽くし、一羽で飛ぶより飛行距離を伸ばすことができる。自転車のロードレースでも同じ戦略がとられている。その役割を順々にこなしていくと、エネルギー消費が約18%ほど抑えられ、同じエネルギーで25羽なら約70%、9羽でも約50%飛行距離が伸ばせるそうである。
リーダーの役割をこなす鳥は目的地を知り、ビジョンを持ち、行動力を発揮し、群れ全体の飛行距離を伸ばしていくのである。この考え方は、実際の経営や現場でも応用が利くのではないだろうか?
たった一人のカリスマ的なリーダーや上司、先輩に頼るのではなく、状況によっては、誰かがリーダーとなり、群れやチームを引っ張っていく「状況によりリーダーが変われる組織」は強いのではないだろうか。ここに部下力、上司力と言った能力も必要になるわけである。○○さんが居ないと機能しないチーム、○○さんが居ないと動けない人、はたしてそのようなチームや人は健康的であろうか。事業を立ち上げたばかりである、まだ新人であるというのであれば、まだ理解はできる。共有する経験、ノウハウ、ドゥハウが蓄積されていないからである。

一人のリーダーに負担をかけすぎて、全体としての飛行距離が伸び悩むより、余力のあるうちに次のリーダーへバトンタッチしていくことを繰り返していく方が、疲労の末にリーダーを失うことを避けることができる。精神疾患を含めた労災認定を受けてしまうことも避けられるだろう。もちろん、飛行距離も伸びる。この場合、飛行距離=売上と考えてみていただきたい。そんな遠くへは行けない、そんな高みにはいけないという縛りをそっと緩めることもできる。つまり、伸びしろや可能性が見出せるわけである。
渡り鳥の知恵を人間の行動に活かしてみる、そんな決断、必要な場創り、ムード創りがほしいところである。

アーネスト・ハート 社会保険労務士 竹内 元宏

この記事にリアクションをお願いします!