9割の企業が「ステークホルダー資本主義」の広がりに肯定的
2019年に米国の経営者団体が行った「株主第一主義を見直し多様なステークホルダーの利益を尊重した経営に取り組む」という発表をはじめとして、海外では「ステークホルダー資本主義」の考え方が広まりつつある。そのような中で、日本企業はどのような意識を持っているのだろうか。はじめに、「ステークホルダー資本主義の考え方が、日本の産業界でも今後広がるか」を尋ねた。すると、「既に一般的に広がっている」が13.2%、「今後広がっていく」が47.4%、「今後ある程度、広がっていく」が29.4%に。ステークホルダー資本主義の考え方の広がりに肯定的な回答は、合わせて90%に達した。
大企業では「既に一般的に広がっている」が2割強。中小企業より高めに
この結果を従業員規模別に見てみると、「既に一般的に広がっている」および「広がっていく」、「ある程度、広がっていく」の合計は、大企業で94.2%(「既に一般的に広がっている」が21.3%、「広がっていく」が47.5%、「ある程度、広がっていく」が25.4%)、中堅企業では90.7%(同11.6%、51.6%、27.5%)、中小企業では84.7%(同8.8%、39.4%、36.5%)に。従業員規模に関係なく、ステークホルダー資本主義の考え方の広がりに、肯定的な回答が大半を占めた。特に大企業では、「既に一般的に広がっている」が21.3%と、他と比べて高く、多様なステークホルダーに対する尊重の意識が広がっていることがうかがえる。「コーポレートガバナンスコードへの対応による企業価値向上」には課題も
また、本調査の回答企業のなかから、上場企業(261社・全体の50.5%)を対象に、「コーポレートガバナンスコードへの対応が、中長期的な企業価値向上の観点から効果的か」を、対応項目別に尋ねた。その結果、「十分に機能している」、「機能している」、「ある程度機能している」の合計が最も高くなったのは、「様々なステークホルダーとの協働に関する行動準則の策定・実践」で、71.6%に。また、「社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題への対応」も70.1%と、7割を超えた。他方で、同合計が低くなった項目は、「人的資本への投資等についての情報開示」(44.1%)や、「各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したスキル・マトリックスの開示」(43.3%)などで、いずれも5割を切る結果となった。
どの項目も、「ある程度機能している」の比率が高く、コーポレートガバナンスコードの本来の目的である「企業価値向上」に結び付けるには、課題も多いことがうかがえる。