株式会社フォーバルのGDXリサーチ研究所は2024年7月26日、「中小企業のESG経営」に関する実態調査の結果を発表した。調査期間は2024年4月1日~5月31日で、全国の中小企業経営者990人から回答を得ている。調査結果から、中小企業におけるESG経営の取り組みの実態が明らかになった。
中小企業の“ESG経営”の実態とは? 6割超が「商品・サービスの改善」実施も、「健康診断実施」や「有給休暇取得の徹底」には課題

「コンプライアンス・倫理」に関する研修機会の提供は2割未満に

ESGとは「Environment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(ガバナンス)」の頭文字からなる用語で、“ESG経営”や“ESG投資”など、近年その注目度が高まっている。企業はESGに配慮した経営を行うことで、社会に対する責任を果たす存在として、投資家や金融機関からの注目が高まり、市場からの企業評価も高まるとして期待されているという。そうした背景のなか、中小企業におけるESG経営の実態はどのようになっているのだろうか。

はじめにGDXリサーチ研究所は、社内・従業員向けの取り組みとして「コンプライアンス・倫理に関する研修機会を提供しているか」と尋ねている。すると、80.8%が「提供していない」と回答し、提供できている経営者は2割に満たないことがわかった。
コンプライアンス・倫理に関する研修機会を提供しているか

6割超が「商品・サービスの課題把握~改善」を実施も、「地域活性化に向けた支援」は未実施が最多に

次に同研究所は、社外向けの取り組みとして、「製品・商品・サービスの品質水準確保のための活動」の実施状況について尋ねた。すると、「課題の把握と改善実施が運用化されている」が20.9%、「課題を把握しており、必要に応じて改善を実施している」が43.5%となり、商品・サービスの課題把握~改善を実施している企業の合計は64.4%と6割を超えた。

また、「地方創生・地域活性化に向けた支援」の実施状況については、「実施していない」が最多の703人となった。他方、実施している企業の支援内容としては、「人的支援」が184人と、実施支援の中で最多だった。

上記の2つの結果から、同研究所は「現状では、地方や地域に対する活動よりも自社の直接の売り上げ・利益に繋がる商品やサービスに関する活動の方が優先度が高くなっている」と推測している。
社外向けの取り組み実施状況

半数超が「女性従業員比率30%以上」。女性離職率も「5%未満」が7割超に

続いて、女性従業員の「比率」および「離職率」についても調べている。比率については、「50%以上」が最多の30.8%となり、「30~49%」の19.8%と合わせると、半数超となる50.6%の企業が女性従業員比率30%以上であることがわかった。

また離職率については、「5%未満」が74.3%と7割を超え、最多となった。一方、「10%以上」の企業が14.5%、15%以上の企業が6.7%を占めたことから、従業員の流動性が高い企業も一定数あることがわかった。
女性従業員の「比率」および「離職率」

「健康診断実施率100%」は7割にとどまる。有給休暇取得の徹底も8割に届かず

最後に、従業員が働きやすい環境づくりの事例として、「健康診断実施率」、「年次有給休暇取得の徹底状況」、「育児・介護休暇の取得状況」を調査している。健康診断実施率については、「100%」との回答は71.3%と、最多であったものの約7割にとどまった。同研究所はこれに対し、「健康診断の実施は労働安全衛生法により事業者の義務とされており、定期的に実施し従業員の健康管理を推進することが重要であり、すべての企業で実施されることが理想」であると述べている。

また、年次有給休暇取得の徹底状況については、「出来ている」との回答は77.7%となり、取得が徹底できている企業は8割弱だった。同研究所はこれについても、「2019年4月から、条件(入社から半年が経過し、出勤率が8割以上の場合)を満たした従業員には年5日の有給休暇を取得させることが義務化されており、違反した際の罰則が設けられています」と前置いたうえで、健康診断と合わせて「100%の徹底が理想」であるとしている。

さらに、育児・介護休暇の取得状況については、「育休制度はあるが、男女ともに取得事例がない」が最多の36.1%だった。これについて同研究所は、「活用が難しい環境や取得できない別な課題を抱えている企業がいる」との見解を述べている。
従業員が働きやすい環境づくりの取り組み状況
本調査から、ESG経営に関する中小企業の取り組み状況が見えてきた。自社の売上などに繋がる「商品・サービスの課題把握~改善」の実施率が高いのに対し、「地域活性化に向けた支援」といった対外的な取り組みは進んでいなかったり、健康診断実施率や有給休暇取得の徹底が十分でなかったりといった点を鑑みると、中小企業におけるESG経営は道半ばである様子がうかがえた。市場における企業価値向上に向け、いまいちど自社のESG経営の取り組みを見直してみてはいかがだろうか。

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