「措置義務」の実施率はいずれも低い実態。対策をしていても認知されていない可能性が
「パワハラ防止対策関連法(ハラスメント規制法・パワハラ防止法)」が2020年6月に施行されたが、職場におけるハラスメントはどのような状況なのだろうか。はじめに、「自身の職場で、ハラスメントの内容・方針の明確化、周知・啓発に関して行われていること」を、ハラスメントの種類ごとに尋ねた。すると、すべてのハラスメントに対し、「特になし」との回答が最も多く、40%を超えた。次いで、「わからない」も約30~40%となった。各ハラスメントにおいて、「禁止・防止する方針」や「行為者への対処方法」といった、措置義務の内容を策定している企業が少ないか、対策を実施していたとしても知られていないという現状もあるようだ。
企業としての対策は「特になし」が最多。具体的な対策を実行している割合は1割未満
続いて、「自身の職場で、ハラスメントが起きた際の対応として行われていること」を尋ねた。すると、いずれのハラスメントについても、「特になし」が30%台後半で最も多い回答だった。また、ハラスメント発生時の対応として行われていることを見ると、いずれのハラスメントにおいても「迅速かつ正確な事実確認」の割合が最も高く、パワー・ハラスメント(以下、パワハラ):11.5%、セクシュアル・ハラスメント(以下、セクハラ):9.8%、マタニティ・ハラスメント(以下、マタハラ):8.6%、ケア・ハラスメント(以下、ケアハラ):8.3%となった。次点は、「速やかかつ適正な被害者に対する配慮のための措置(被害者と行為者を引き離すための配置転換等)」で、パワハラ:9%、セクハラ:7.9%、マタハラ:6%、ケアハラ6.1%となった。
約3割がハラスメントを受けた経験が「ある」。なかでも40代男性が高い結果に
さらに、「職場でハラスメントを受けたことがあるか」と尋ねると、全体では「受けたことがある」が32.4%と、およそ3人に1人の割合となり、職場でハラスメントの被害に遭った経験がある人は少なくないようだ。男女・世代別では、ハラスメントを受けたことがある人の割合は、40代男性が42.4%と特に高く、次いで30代および50代女性がいずれも35.2%となった。職場で受けるハラスメントで最も多いのは「パワハラ」。新型コロナに関連するハラスメントも
また、職場で受けたハラスメントの種類を尋ねた。「パワハラ」が27.6%で最も高く、以下「セクハラ」(8.5%)、「ジェンダー・ハラスメント」(4.2%)、「新型コロナウイルス感染症に関するハラスメント」(3.1%)、「性的指向・性自認に関するハラスメント」(2.2%)、「ケアハラ(育児・介護)」(2.1%)、「マタハラ」(1.7%)となった。職場において、嫌がらせやいじめを受けたり、身体的・精神的苦痛を与えられたりした経験者は少なくないことがうかがえる。ハラスメントの種類ごとに、回答割合が多かった性別および世代を見ると、「パワハラ」では40代男性が最も多く40%、「セクハラ」では20代および30代女性(順に12%、16.8%)が他と比べて多い結果に。この他、「ケアハラ」は40代および50代女性(いずれも4%)、「性的指向・性自認に関するハラスメント」では20代男性(4%)でやや高くなった。
ハラスメント行為者は「上司」が圧倒的。しかし、ハラスメントの種類によっても異なる
続いて、「自身が受けたことのあるハラスメントの行為者」を尋ねると、すべてのハラスメントで「上司」が最も高く、「性的指向・性自認に関するハラスメント」の59.1%をのぞき、70%を超えた。また、各ハラスメントでの回答を比較して高い傾向を示したものとして、「ジェンダー・ハラスメント」では「先輩」が50%、「新型コロナに関するハラスメント」では「部下」が9.7%などとなった。「セクハラ」、「マタハラ」、「ケアハラ」、「ジェンダー・ハラスメント」では、「同僚」からが各30%程度を占めており、一定数あることがわかった。