実務担当者としては、提出する書類が多く対応に気が抜けない仕事であると思うが今一度実務上のポイントについて確認しておきたい。
産休と育休にまつわる、実務のポイント9
1.産前産後休業(以下「産休」。)期間中の社会保険料の免除手続き(健康保険・厚生年金保険被保険者)産休中(産前42日※多胎妊娠の場合は98日、産後56日)の社会保険料は、『産前産後休業取得者申出書』を健康保険組合等に提出することにより、事業主分・被保険者分ともに免除されるようになった。申し出は、産休期間中に行えばよいが、産前に申し出をした場合、出産予定日どおりに出産した場合を除き、『産前産後休業取得者変更(終了)届』を提出しなければならないので注意が必要だ。
2.出生児を健康保険の被扶養者にする手続き(健康保険・厚生年金保険被保険者)
『被扶養者(異動)届』を健康保険組合等に提出する。夫婦共働きの場合は、原則として年間収入の多い方の被扶養者となる。
3. 出産したときの給付の手続き(健康保険・厚生年金保険被保険者)
妊娠85日(4ヵ月)以後に出産したとき、出産一時金(1児につき原則42万円)が支給される。受給方法は下記の2通りがあり、選択した受給方法に基づき本人が申請を行う。
① 直接支払制度・受取代理制度を利用する場合
② 直接支払制度を使用せず産後申請する場合
①は、出産する医療機関が『直接支払制度』、『受取代理制度』のどちらを実施しているかで利用する制度が決まる。①を利用する方が病院での支払い時に手出しが少なくて良いが、筆者は②を選択し、『出産育児一時金支給申請書』を健康保険組合等に提出し、一時金を直接受給した。出産費用はクレジットカード払いできる場合が多く、金額が大きい為ポイントがついてお得なのである。
4. 出産で会社を休んだときの給付の手続き(健康保険・厚生年金保険被保険者)
産休期間、給料の支給がないときは、『出産手当金支給申請書』の提出により出産手当金(1日につき標準報酬日額の3分の2の金額)が支給される。
5. 『育児休業取扱通知書』の交付(全従業員)
育児休業(以下「育休」。)の申し出があったら、以下について書面等で通知しなければならない。その際、休業中における待遇に関する事項、休業後における賃金、その他の労働条件に関する事項等に関する取扱いを明示することが望ましい。
① 育休申出を受けた旨
② 育休開始予定日及び終了予定日
③ 育休申出を拒む場合には、その旨及びその理由
6.育休期間中の社会保険料の免除手続き(健康保険・厚生年金保険被保険者)
育休期間中も社会保険料が免除となる。産休から休業期間は継続していても、『育児休業等取得者申出書』の提出が必要となるので忘れずに提出したい。なお、終了予定日より前に育休を終了した場合は、『育児休業等取得者終了届』が必要となる。
7.育休期間中の雇用保険の給付の手続き(雇用保険被保険者)
育休期間中は、休業開始から180日までは休業開始前の賃金の67%、181日目からは50%の育児休業給付金が支給される。支給申請書の提出は事業主又は本人が行うとされているが、労使協定を締結し事業主が提出している場合が多い。『育児休業給付金受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書』と『雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書』等を育休開始日から起算して4か月を経過する日の属する月末までに管轄のハローワークに提出が必要である。2回目以降は、『育児休業給付金支給申請書』を2ヵ月ごとに提出することが必要だ。本人の署名・捺印が必要なので、送付等やり取りも必要となってくる。
8.産前産後・育休終了後の標準報酬月額の改定(健康保険・厚生年金保険被保険者)
産前産後・育休終了後に、短時間勤務等により報酬が下がった場合は、終了後の3ヵ月間の報酬額をもとに、新しい標準報酬月額を決定し翌月から標準報酬月額を改定してもらうことができる。その場合は『産前産後休業終了時報酬月額変更届』又は『育児休業等終了時報酬月額変更届』の提出をしなければならない。
9.養育期間中の標準報酬月額の特例措置(みなし措置)
8.により標準報酬月額が従前より下回る場合でも、『養育期間標準報酬月額特例申出書』を提出することにより、年金額の計算において従前の標準報酬月額を養育期間中の標準報酬月額とみなしてくれる。8.と併せて対応をしたい。
筆者は事業主につき、上記制度で利用できたのは出産一時金の受給のみであった。産休・育休制度の拡充は羨ましい限りである。
しかし、働く母として、女性が負担なく出産、勤務継続できる世の中となるよう、制度が充実することを願っている。
松田社労士事務所
特定社会保険労務士 松田 法子