指導係を決めて主にその指導係から様々な業務を教わる指導係型、引き継ぐ業務ごとに指導係が変わる業務引継ぎ型、とにかく見て習う職人型など…。各社様々であろう。求められるスキルやどのような価値観を重視するかということも各社で異なるのだから、それは当たり前のことかもしれない。
違う新人に同じ指導方法は通用しない
しかし、どのような会社においても、例えばAさんにはこの方法でうまく行ったのに、Bさんにはこの方法で行かなかったという経験があるのではないか。そんな時、Bさんの素養のせいにしていないだろうか。「Bさんは出来が悪いね、Aさんはうまく行ったのに…」と。人はそれぞれ違う。同じ育成方法ではうまくいかないこともある。例えば、自分に子供が2人(姉妹)いたとしよう。その姉と妹、同じ伝え方、同じ指導、同じ価値観で育てることが出来るだろうか。答えはNOであろう。同じ親から生まれてきた子ども同士でさえ育て方は異なるのだから、全く違う環境で育ってきた新人2人の指導方法を変えなければならないのは当然のことではないだろうか。
タイプ別指導方法
そこで知っておきたいのが「タイプ別」の新入社員の指導法である。この図は、アメリカのディビッド・メリル博士が提唱したソーシャル・スタイル理論に基づくマトリックスで、自己主張度と感情表現度で形成されている。
まず横軸だが、右に行けばいくほど、自己主張度が高いということになる。つまり、自分の考え・意見をきちんということが出来る。自己主張度が低い人というのは、自分が意見するよりも人の話を「聞いて」いることが多い特徴がある。
次に縦軸を見ていこう。下に行けばいくほど、感情表現度が高いということになる。喜怒哀楽がハッキリしており、どんなことを感じているのか表に出やすい特徴と言える。一方、上に行けばいくほど感情表現度は低い。たまに「何を考えているかわからない」という人がいるが、まさにそのタイプ。内に秘めたその感情がなかなか表に出ない特徴がある。今回は、新入社員をこの4タイプに当てはめて考えていこう。(※タイプの動物は筆者が独自に判断したものである)
A:お猿タイプ
(特徴)自分の意見を述べることができる。また、感情も表に現れやすいタイプ。ムードメーカーになりやすい。頼りにされること、話を聴いてもらうことを望んでいるタイプ。
(指導方法)
「これをあなたに任せたい」「もっとあなたの話(意見)を聴かせてほしい」というと力を発揮するタイプ。「あなただから」と一声かけて仕事を任せてみると効果大。俄然やる気を出して取り組むであろう。
B:ぞうさんタイプ
(特徴)人の意見をよく聴いて、広いこころで受け止めることが出来るタイプ。反発するということは少なく、何事も穏やかにことを済ませたい平和主義タイプ。
(指導方法)
自分がどう思うかではなく「人がどう思うか」を重視するため、意思決定には少し時間がかかる。そのため、初めのうちは意見を求めるよりも「一緒に考えていこう」と協力するスタイルが本来の力を出せる。
C:鷹タイプ
(特徴)自分の考えを強く主張することもなく、感情を表面に出すこともあまりしない。一言でいうと、冷静沈着なタイプである。設計など緻密な仕事や黙々と作業をする場合にこのタイプが力を発揮することが多い。
(指導方法)
Bタイプ同様、「自分の意見より人の意見を優先」するため、意思決定には多少時間がかかる。答えをせかされると「特に」「別に」と答えてしまいがち。そのため、例えば「来週のミーティングで○○について話しますから考えておいてください」と予告しておくとよい。用意周到の準備をして考えてきてくれるだろう。
D:オオカミタイプ
(特徴)きちんと自分の意見を持っているが、自らでしゃばり発言することはしない。普段は感情を表に出さないが、物事を冷静に見極めているので、意見を求められると鋭い意見などをいう事もある。
(指導方法)
自分の意見を持っているため、意見を求められることや意思決定をゆだねられることはやぶさかではない。一見クールで何を考えているかわからないが、要所要所で「あなたはどう思うか」と尋ねるときちんと意見を述べてくれるだろう。
自部署に配属された新入社員が、はたしてどのタイプか。併せて「自分がどのタイプか」を把握しておくことで、指導は間違いなくスムーズになる。コミュニケーション不足の問題は、自分と相手のことを知ることで、その8割は解消するからだ。
相手に合わせることは難しくても、相手のタイプに歩み寄ることは誰しも出来るはず。そのためのひとつのツールとして、このタイプ別指導法をぜひ活用してほしい。
株式会社ブレインコンサルティングオフィス大阪営業所 所長
社会保険労務士 神野 沙樹