Society5.0の実現に向け、新しい量子ビジネスの機会を促進させるQII協議会
「よりよい社会の姿」として提示されたSociety5.0の実現にあたり、リアルなデータを活用することが不可欠だ。地球環境(実空間)とサイバー空間を一体と捉え、グローバルコモンズ(地球の資源と生態系を包含した概念)として守り育てるために、量子技術や量子コンピューターは今後必要な技術になるという。東京大学が創設したQII協議会は、量子コンピューティングを実現する科学技術を国内から独自に集結させたもの。「戦略的な研究開発活動の強化」、「産官学の協力による、国全体のレベルアップと実現の加速化」を図り、幅広い産業に貢献していくという。
また同協議会では学生や教職員、産業界の研究者との連携を目指し、セミナーやワークショップへの参加を促して、日本における新しい量子ビジネスの機会を促進させる考えだ。
コンソーシアムを発足し、日本経済の成長や量子技術のリーダーシップを強化
QII協議会への参画を検討し始めたのは10団体。学校法人慶應義塾、株式会社東芝、株式会社日立製作所、株式会社みずほファイナンシャルグループ、株式会社三菱UFJファイナンシャル・グループ、JSR株式会社、DIC株式会社、トヨタ自動車株式会社、三菱ケミカル株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社だ。多くの企業が集まるコンソーシアムを発足し、日本経済の成長や量子技術のリーダーシップ強化に貢献していくという。10団体のうち、東芝、日立製作所、DIC、トヨタ自動車の4社は、新たにIBM Q Networkのメンバーとなる予定だ。IBM Q Networkとは、様々な企業が参加する、量子コンピューティングの発展と実用的なアプリケーションの探求に取り組むコミュニティーを指す。
IBM Q Networkネットワークの参画企業は、「IBM Q Networkの専門知識・リソース・オープンソースのQiskitソフトウェア・開発ツール」と「IBM Quantum Computation Centerに設置され、現在一般提供されている最先端の量子コンピューター(クラウド経由)」にアクセスが可能になるという。さらに、協議会の正会員は最先端量子コンピューター「IBM Q System One」と、2021年に日本に導入予定の量子コンピューターが利用できる。
これらにより、「極低温コンポーネント」、「室温電子機器」、「マイクロ波信号発生器」など、次世代量子ハードウェアの研究開発というコンソーシアムの目標を推進していくという。
日本での量子コンピューターの実用化によって、社会に多大な利益をもたらすことが期待されている。量子技術の研究や使用事例のための新たなコミュニティーを構築できるよう、グローバル規模で、産官学が一体となった協業が今後求められていくだろう。