一般社団法人日本能率協会は2023年10月2日、「2023年度新入社員意識調査」の結果を発表した。調査期間は2023年4月4日~11日で、2023年度の新入社員675名より回答を得た。なお本調査では最終学歴について、高校卒業の人を「高校卒群」、その他を「高校卒外群」として表記している。調査結果から、社会人1年目の社員が持つ、“働くこと”に対する意識や本音を紹介する。
“1年目新入社員”の約3割が「転職や独立」を想定している? 23卒意識調査を性別および学歴別に傾向分析

女性の半数以上が「プライベートも大事にする上司」を支持

24卒生の内定式を終え、今後の新入社員受け入れに向けて準備を進める企業も多いと思われる。直近の2023年入職者は、現在の職場や業務内容に対してどのような意識をもっているのだろうか。

今回の調査では、まず「理想だと思うのはどのような上司や先輩か」を尋ねた。すると、「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」が79%と最も多く、以下、「言動が一致している上司・先輩」が53.2%、「部下の意見・要望を傾聴する上司・先輩」が47.3%で続いた。

この結果を最終学歴別に見ると、属性を問わず最も多かったのは「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」となっていた。他方、全体結果で第2位の「言動が一致している上司・先輩」の項目は、高校卒群:39.2%/高校卒外群:59%と、最終学歴によって差があった。同様に、第3位の「部下の意見・要望を傾聴する上司・先輩」も、高校卒群:39.2%/高校卒外群:50.6%と、最終学歴によって差が見られた。これらの結果を見ると、高校卒外群の方が、より上司や先輩の“言動”や“傾聴力”を重視している傾向がうかがえる。

また男女別に見ると、第5位の「仕事だけでなく、プライベートも大事にする上司・先輩」の項目は、男性:38.1%/女性:52.1%と差が顕著に見られた。女性のほうが、プライベートも大事にする上司や先輩を理想的だと思う傾向があるとわかる。
理想だと思うのはどのような上司や先輩か

仕事への不安のトップは「上司・同僚とうまくやっていけるか」

続いて同社が「仕事をしていく上での不安」を尋ねたところ、「上司・同僚など職場の人とうまくやっていけるか」(68.6%)が最も多かった。以下、「仕事に対する現在の自分の能力・スキル」(65.6%)、「仕事での失敗やミス」(50.7%)と続いた。

また、トップの「上司・同僚など職場の人とうまくやっていけるか」の結果を男女別に比較したところ、男性が67.8%、女性が69.7%とほぼ同水準だった。一方で、第2位の「仕事に対する現在の自分の能力・スキル」は男性が60.4%、女性が73.8%、第3位の「仕事での失敗やミス」は男性が45.2%、女性が59.2%と、これらの項目では女性のほうが仕事をしていく上で不安を抱えやすい傾向にあると推察される。
仕事をしていく上でどのようなことに不安があるか

全体の8割以上が「上司や先輩からのあいまいな指示」に抵抗感

次に同社は「仕事をしていく上での抵抗感」について、いくつかの項目別に尋ねた。すると、「上司や先輩からの指示があいまいでも質問しないでとりあえず作業を進める」の項目は、「抵抗感がある」(41.3%)と「どちらかといえば抵抗感がある」(42.4%)の合計が83.7%で、8割を超えた。以下、「知らない人や取引先に電話をかける」(同合計67.4%)、「会議や打ち合わせで自分の考えを発信する」(同合計58.6%)と続いた。

同社がこの結果を最終学歴別で比較したところ、高校卒群の方がすべての項目で「抵抗感がある」と答えた割合が高かったという。このことについて、同社では「学生生活やアルバイトなどの経験年数が増えることによって、抵抗感が抑えられているのではないか」との見解を示している。
事例ごとの仕事をしていく上での抵抗感

入社1年目で既に3割が「機会があれば転職・独立したい」と回答

続いて同社は、「自身の仕事・働きに対する考え方」について、「A.定年まで一つの会社に勤めたい」、「B.機会があれば転職・独立したい」のどちらに近いかを尋ねた。その結果、「Bに近い」(11.9%)、「どちらかというとBに近い」(18.2%)の合計は30.1%だった。

最終学歴別に同割合を見ると、高校卒外群が34%、高校卒群が20.6%となった。高校卒外群と高校卒群では、「機会があれば転職や独立したい」と考える人の数に差があることが明らかとなった。
自身の仕事・働きに対する考え方に近いのはどちらか

「会社の将来性」や「社風・企業文化」は転職を考えるきっかけに

さらに同社が、質問した結果から「どのようなシチュエーションが起こったら転職を考えるか」という割合を算出したところ、「会社の将来性が見込めなくなったとき」の項目で、「転職を考える」との回答が78.4%と最も高くなっていた。以下、「社風や企業文化が自分に合わないと感じたとき」(72.4%)、「昇給(月給が上がること)が見込めないとき」(59%)、「昇進が見込めなくなったとき」(57.8%)などが上位で続いた。

ただし、「昇給が見込めないとき」と「昇進が見込めなくなったとき」のシチュエーションでは、「同じ職場での仕事を続ける」を選んだ人もそれぞれ3割を超えていた。
シチュエーション別の起こったときに考えること

今後強化したい力は「学習能力」や「意見を伝える力」が多数

最後に、同社が「これから仕事をしていく上で、強化したいと思う点(能力・スキル・資格)は何か」を尋ねると、トップは「学習能力(他社や経験から学ぶ力)」(62.8%)で、以降は「自分の意見をわかりやすく伝える力」(52.7%)、「物事に進んで取り組む力」(49.2%)が続いた。

属性別に見ると、「自分の意見をわかりやすく伝える力」は男女間で16.1ポイントの差があり、女性の方が高いことがわかった。また、「課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力」では、高校卒群と高校卒外群との間に16.8ポイントの差があり、高校卒外群の方が高くなっていた。設問によって程度の差はあるものの、最終学歴や男女差によって意識する課題が異なる傾向となった。
これから仕事をしていく上で、強化したいと思う点は何か
本調査結果から、新入社員の中には「人間関係」や「自身の能力やスキル」において不安を抱いている人が多いとわかった。また、約3割の人が入社当初から転職や独立を考えていることも明らかとなった。最終学歴や性別によっても、仕事をする上で意識する課題は異なるため、一人ひとりに合わせた教育や支援が必要だと言えるだろう。

※本記事における調査結果の出典:2023年度「新入社員意識調査」(一般社団法人日本能率協会)

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