「介護問題に直面している管理職」の割合は男女ともに約2割と同水準に
生産年齢人口の減少が続く中で、仕事をしながら家族等の介護をする「ビジネスケアラー」の数は増加傾向にあり、介護に起因した労働総量や生産性の減少による労働損失が懸念されている。少子高齢化時代において介護と仕事の両立は不可欠であるが、管理職におけるビジネスケアラーの実態はどうなのだろうか。まずリクシスは、男女管理職10,721名(女性管理職1,170名・男性管理職9,551名)に、「想定する介護対象者の現在の状態」を聞いた。すると、女性管理職で「すでに介護問題に直面している(※)」とした割合は22%だとわかった。
※親や高齢の家族など想定する介護対象の家族が「すでに要介護認定を受けている」、もしくは「まだ要介護認定まではしていないが、すでに頻繁にケアが必要な状況にある」状態
管理職の「ビジネスケアラー発生確率」は全年代で男性より女性が高い結果に
続いて同社は、男女別に「管理職のビジネスケアラー発生確率」(「日々要介護家族をサポートしながら仕事をしている」と回答した割合)を調べた。すると、全年代で女性管理職の方が男性管理職よりも高い数値だった。管理職層のボリュームゾーンである40~54歳の年代では、女性管理職のビジネスケアラー発生確率が、男性管理職の約2倍であることが示された。主たる介護者を「自分」と答えた女性管理職は4割以上。男女で介護モデルの差が顕著に
次に同社は、「管理職ビジネスケアラーとして仕事と介護を両立している」とした管理職876名(男性管理職742名・女性管理職134名)に、「主たる介護者」について尋ねた。その結果、男性管理職ケアラーでは、主たる介護者が「自分」であると回答したのは28.2%で最も多く、以下、「自分の配偶者」(25.3%)、「親」(19.7%)だった。一方、女性管理職ケアラーでは、「自分」と答えた割合が41.8%と高い数値を示し、以下、「親」(27.6%)、「兄弟姉妹」(14.2%)と続いた。このように男女では、両立中の介護モデル自体に大きな違いがあることが示された。
また、日々の介護には直面していないものの、数年以内に要介護家族の世話が必要になるとみている「ビジネスケアラー予備軍管理職」にも同様の質問をしたところ、「いざというときに想定する主たる介護者が自分である」と答えた割合は女性管理職が圧倒的に多く、3割強だったとのことだ。
女性管理職ケアラーの悩みは男性より深く、「物理的・心理的負担が辛い」が6割強に
最後に同社は、「男女管理職ケアラーが感じる悩み・不安」について調べた。すると、女性では「介護にかかる物理的負担や心理的負担が辛い」(66.4%)が6割強となったほか、「介護を抱えた自分の将来キャリアに悩んでいる」(49.3%)も半数程度に及んだ。また、全ての悩みにおいて、男性管理職より女性管理職の方が高い値となった。この結果から、女性管理職ケアラーの負担感は、男性管理職ケアラーよりも大幅に高いレベルにあるとわかった。同社は、「『女性を意思決定層に』と育成・登用を加速しても、高齢化が進む中で企業側のビジネスケアラー支援が現状のままでは、企業経営が立ち行かなくなるリスクがある」との見解を示している。